2015年3月10日火曜日

君が生きた証

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








息子を失った父親が音楽を通して再生していくヒューマン・ドラマ「君が生きた証」。中盤、ある秘密が浮かび上がった途端に多面性を帯びる秀作。



やり手の広告マンのサムは、大学での銃乱射事件で息子ジョシュが死亡して以来、会社を辞めボートで隠遁生活を送っている。ある日、別れた妻がやって来て、音楽好きは父親のサム譲りだと、生前ジョシュが作っていた歌の歌詞とデモCDを置いていく。ジョシュが残した曲を聴いたサムは、遺品のギターを手に場末のライブバーで演奏。ステージを見ていた若者クエンティンが一緒にバンドをやろうと誘う。彼らのバンド“ラダーレス”は地元で人気ものになり大きなフェスに参加することになるが、サムにはある秘密があった…。



「ファーゴ」などで渋い演技をみせる名優ウィリアム・H・メイシーの初監督作だが、これが初とは思えないほどしっかりとした秀作だ。メイシーの人脈なのだろう、キャストには実力派俳優が揃っているし、モチーフとなる音楽も実に素晴らしい。だが、ストーリーに仕掛けられたあるトリッキーな秘密が立ち現われる中盤以降、まさかこういう展開になろうとは…!と驚くはずだ。息子を失った父親の再生物語だけではない、別のテーマが浮かび上がってくる。贖罪とも慈愛ともいえるその事実は、つらくて苦い。息子が作った歌を自作だとして歌うサムだが、その歌の歌詞はどうしてこんなに美しくて悲しいのか。理由は映画を見て確かめてほしいが、その楽曲は、サムを息子の死と向き合わせ、やがて生きる希望へと導いていく。メイシーはライブハウスのオーナー役でいい味を出しているし、F.ハフマン(メイシーの妻です)、L.フィッシュバーン、チラリと登場し印象的な役を演じるセレーナ・ゴメスなど、脇役も豪華だ。だが何よりも主演のビリー・クラダップや、自身もバンドを組んでいるアントン・イェルチンが本物の歌声と演奏で、映画をしっかりと後押ししているのが光った。音楽、特にロックの誕生には、しばしば傷ついた魂の叫びが存在し感動を生む。父親サムの歌声が心にしみわたるのは、そのためなのだ。ウィリアム・H・メイシー、深い洞察力と丁寧な演出で、見事な作品を作ってくれた。

【75点】

(原題「RUDDERLESS」)

(アメリカ/ウィリアム・H・メイシー監督/ビリー・クラダップ、アントン・イェルチン、フェリシティ・ハフマン、他)

(音楽の魅力度:★★★★☆)

チケットぴあ



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