source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
能登半島を舞台に心に傷を抱えた二人の女性の友情と成長を描く「さいはてにて やさしい香りと待ちながら」。雰囲気重視、絵作り重視の女性映画。
石川県の奥能登。東京から故郷であるこの地に戻ってきた吉田岬は、海辺の舟小屋を改装し、焙煎珈琲店“ヨダカ珈琲”の営業を始めた。岬は、幼少時に父親と生き別れ、父との再会を願っていたのだ。岬の店の向かいにある民宿には、子供を二人抱えたシングルマザーの山崎絵里子が住んでいた。絵里子は考え方が異なる岬に嫌悪感を抱いていたが、舟小屋で起こった事件がきっかけで心を開くようになる。岬と絵里子、そして二人の子供たちは家族のように支えあうが、岬の父親についてある事実が発覚する…。
女性の自立と心の再生を描いた作品だが、監督が名匠ホウ・シャオシェンに師事した台湾の女性監督チアン・ショウチョンであることが目を引く。ゆったりとした時間の中で、女性二人が、一人は行方不明の父、もう一人はダメ男から決別し、友情を育んでいく物語だ。珈琲店が舞台だが、そこはカフェというより、コーヒー豆の量り売り屋さんという感じ。大きな焙煎機、時間をかけていれる一杯のコーヒー、夕陽に染まった海。映像のすべてが美しく繊細だ。演技派の永作博美の静かなたたずまいと表情もいい。だが難点も。それは物語にまったく生活感がなく、リアリティに欠けることだ。とても商売が成り立たないような、さいはての場所で営業する珈琲店は、どうやらインターネット販売が主流のようだが、映画にはパソコンひとつ出てこない。現代を生きる女性がしっかりと前を向く物語なら、もう少し細部に同時代性がほしかったところだ。北陸新幹線によって注目される能登半島だが、厳しい自然や澄んだ空気感をとらえたロケ撮影が素晴らしい。まさしく“さいはて”と呼ぶにふさわしい海辺の店に外灯がポツンと灯れば、それは灯台の明かりのように、ヒロインたちを導いてくれる光に見えてくる。全編をとおして、波と風の音が印象的な作品だ。
石川県の奥能登。東京から故郷であるこの地に戻ってきた吉田岬は、海辺の舟小屋を改装し、焙煎珈琲店“ヨダカ珈琲”の営業を始めた。岬は、幼少時に父親と生き別れ、父との再会を願っていたのだ。岬の店の向かいにある民宿には、子供を二人抱えたシングルマザーの山崎絵里子が住んでいた。絵里子は考え方が異なる岬に嫌悪感を抱いていたが、舟小屋で起こった事件がきっかけで心を開くようになる。岬と絵里子、そして二人の子供たちは家族のように支えあうが、岬の父親についてある事実が発覚する…。
女性の自立と心の再生を描いた作品だが、監督が名匠ホウ・シャオシェンに師事した台湾の女性監督チアン・ショウチョンであることが目を引く。ゆったりとした時間の中で、女性二人が、一人は行方不明の父、もう一人はダメ男から決別し、友情を育んでいく物語だ。珈琲店が舞台だが、そこはカフェというより、コーヒー豆の量り売り屋さんという感じ。大きな焙煎機、時間をかけていれる一杯のコーヒー、夕陽に染まった海。映像のすべてが美しく繊細だ。演技派の永作博美の静かなたたずまいと表情もいい。だが難点も。それは物語にまったく生活感がなく、リアリティに欠けることだ。とても商売が成り立たないような、さいはての場所で営業する珈琲店は、どうやらインターネット販売が主流のようだが、映画にはパソコンひとつ出てこない。現代を生きる女性がしっかりと前を向く物語なら、もう少し細部に同時代性がほしかったところだ。北陸新幹線によって注目される能登半島だが、厳しい自然や澄んだ空気感をとらえたロケ撮影が素晴らしい。まさしく“さいはて”と呼ぶにふさわしい海辺の店に外灯がポツンと灯れば、それは灯台の明かりのように、ヒロインたちを導いてくれる光に見えてくる。全編をとおして、波と風の音が印象的な作品だ。
【55点】
(原題「さいはてにて」)
(日本/チアン・ショウチョン監督/永作博美、佐々木希、桜田ひより、他)
・さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~@ぴあ映画生活