2015年7月3日金曜日

チャイルド44 森に消えた子供たち

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


チャイルド44 森に消えた子供たち
猟奇殺人事件を巡って社会主義国家の闇と闘う捜査官を描く「チャイルド44 森に消えた子供たち」。最近のトム・ハーディ映画にハズレなし!

スターリン政権下のソ連。幼い子供ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が発生するが、国家は社会主義国家に犯罪は存在しないという建前から、事件をすべて事故として処理しようとする。秘密警察の捜査官レオは真相を追いはじめるが、国家の妨害と部下の策略によって、不当なスパイ容疑をかけられた妻ライーサとともに窮地に追い込まれる…。

原作はトム・ロブ・スミスのベストセラー小説。ウクライナ出身の猟奇殺人鬼アンドレイ・チカチーロ事件をモデルにした世界的ベストセラーだが、旧ソ時代の闇を描いたとしてロシアでは発禁本、現時点で映画の上映予定もないのだそうだ。物語は、殺人事件が発端ではあるが、映画は事件の犯人探しやミステリーには重点を置いていない。描きたいのは、社会主義政権が掲げた欺瞞と権力の腐敗。何しろ、社会主義国家は楽園(パラダイス)なので、犯罪など起こるはずがない、犯罪は堕落した西側資本主義の賜物だという見地から、犯罪の真実を追うものを迫害するのだから、もうむちゃくちゃだ。国家に必要とされない障害者などを無理やり犯人にして事件そのものを闇に葬る倫理観の欠如に、背筋が凍る。映画は犯人探しよりも、偽りの理想国家を装う権力側のグロテスクな側面と、当時の相互不信に満ちた人間関係を浮き彫りする社会派ドラマなのだ。同時に、実は愛がなかったレオとライーサ夫婦が、共に巨大な敵と戦う過程で絆と愛が芽生え、真の夫婦になっていくという人間ドラマも見ごたえがある。「マッドマックス」の快演といい、昨今のトム・ハーディの活躍ぶりは目覚ましいが、本作では薄暗い画面の中でどっしりとした存在感を示して好演だ。主人公が左遷された先の警察署長を演じるゲイリー・オールドマンの複雑な立ち位置が、いい隠し味になっている。
【70点】
(原題「CHILD 44」)
(アメリカ/ダニエル・エスピノーサ監督/トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス、他)
(サスペンス度:★★★☆☆)
チケットぴあ

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