2015年7月22日水曜日

サイの季節

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




(ショートバージョン)
1979年、イスラム革命の混乱の中、詩人のサヘルとその美しい妻ミナは、運転手アクバルの密告により、不当に逮捕され別々の刑務所に収監される。サヘルは30年後にようやく釈放されるが、先に出所したミナは夫はすでに刑務所内で死んだという嘘を信じ込まされていた。必死にミナを探すサヘルだったが…。

クルド人監督バフマン・ゴバディがイランから亡命後、トルコで製作した映画「サイの季節」は、イスラム革命に巻き込まれた人々の、悲劇的な運命を描くドラマだ。人気女優モニカ・ベルッチが出演し、マーティン・スコセッシが製作にまわるなど、実は豪華な作品だが、ストーリーはかなり悲痛なものである。裕福な雇い主夫婦を妬み、美しい妻ミナに横恋慕したアクバルは、夫サヘルを事実無根の罪で密告した後、妻ミナを自分のものにしようとするが、その思いはかなわない。ミナはアクバルの影響力から逃れられないまま、サヘルを思い続け、サヘルは妻を探しながら、衝撃的な運命の罠に落ちていく。革命に象徴される国家の暴挙が、登場人物の誰も幸福にしない悲劇的な物語は、今も亡命の身であるゴバディ監督自身の境遇や孤独な心情を織り込んだものだ。モデルは、実在するクルド系イラン人の詩人サデク・カマンガル。社会派のメッセージを込めた壮大なメロドラマだが、現実と幻想が入り混じるかのように、動物のカメやサイが突如現れるシュールな映像美が印象に残る。
【70点】
(原題「RHINO SEASON/FASLE KARGADAN」)
(イラク・ルトコ/バフマン・ゴバディ監督/ビーローズ・ヴォソーギ、モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、他)
(宿命度:★★★★☆)
チケットぴあ

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