2015年7月8日水曜日

約束の地

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Jauja [Blu-ray] [Import]
(ショートバージョン)
1882年。デンマーク人のディネセン大尉は、アルゼンチン政府軍による先住民掃討作戦に参するため、美しい15歳の娘インゲボルグを連れてパタゴニアにやってくる。だが娘は若い兵士と駆け落ちし、海辺の野営地から忽然と姿を消す。愛する娘を必死で探す父ディネセンだったが、険しい地形や思わぬ障害に阻まれ、広大な荒野で孤立してしまう。やがて一匹の犬に導かれるように、不思議な世界へと迷い込むが…。

これは、寓話か、はたまた神話か。何とも変わった手ざわりの映画だ。まず画面のサイズが不思議で、四隅が丸い変形スタンダードという異形のスクリーンサイズに驚く。物語がこれまた幻想的で、パタゴニアの荒々しい自然の中に放り込まれた人間が、いつしか吸い込まれ同化していくかのようなストーリーだ。いなくなった娘を探して彷徨う父親は、荒野の洞窟で一人の老婦人と出会い語り合う。ここはもはやこの世ではないのだろうか、と思ってみていると、案の定、終盤、唐突な展開に。正直、面食らうのだが、不思議と好印象が残るのは、パタゴニアの原始的風景に魅了されてしまったからかもしれない。国際的に活躍する名優ヴィゴ・モーテンセンが惚れ込んだという、アルゼンチン人監督のリサンドロ・アロンソ。この人の作品を見るのは初めてだが、タダモノではないとみた。カウリスマキ映画でおなじみの撮影監督ディモ・サルミネンがとらえる変幻自在の映像もまた、大きな魅力になっている。ラテンアメリカ文学でよく形容される、日常と非日常が混濁するマジックリアリズムのようなロード・ムービーだ。
【65点】
(原題「JAUJA」)
(アルゼンチン・デンマーク・仏・メキシコ・米・独・ブラジル・オランダ/リサンドロ・アロンソ監督/ヴィゴ・モーテンセン、ビルビョーク・マリング・アガー、ギタ・ナービュ、他)
(摩訶不思議度:★★★★☆)