2015年10月8日木曜日

天使が消えた街

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Ost: the Face of An Angel
2011年。気鋭の映画監督トーマスは、2007年にイタリアの古都シエナで起きた殺人事件の映画化をオファーされ、そのリサーチのためイタリアに到着する。アメリカ人ジャーナリストで事件のノンフィクション作家シモーンと会い、リサーチを始めるが、事件に対するマスコミの報道は扇情的なものばかりだった。被告のアメリカ人留学生は本当に犯人なのかも分からず、訳知り顔の人気ブロガーや勝手な憶測で騒ぎ立てる世論に、トーマスは翻弄されるが…。

イタリアで実際に起こった女子留学生殺人事件を扱った「天使が消えた街」は、謎解きやサスペンスというより、映画監督が自らの内面と芸術家としての葛藤に苦悩する姿を主軸にしたドラマだ。舞台はシエナに置き換えられているが、モデルは、世界的なスキャンダルと化した“ペルージャ英国人女子留学生殺害事件(アマンダ・ノックス事件)”である。容疑者が若くて美しい女子学生だったために、メディアが加熱し、スキャンダラスに報道された事件だ。本作では映画監督のトーマスがこの事件を映画化するにあたり、有名女優を使うサスペンスとして撮ってほしい製作側の意向とは裏腹に、関係者たちの心理を掘り下げようと、苦悩する姿を描く。怪しげな人物や迷宮のような古都シエナの街、別れた妻や離れて暮らす娘への思いが悪夢のように交錯する中で、トーマスにまっすぐなまなざしを向けるピュアな女子学生の存在が彼にかろうじて理性を保たせるという構図だ。混沌とした中でもがく主人公は、アートの生みの苦しみの象徴だろうか。映画としては何ともすっきりしないのだが、これが芸術家の苦悩なのだと言われれば、納得してしまう。
【55点】
(原題「THE FACE OF AN ANGEL」)
(英・伊・スペイン/マイケル・ウィンターボトム監督/ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセイル、カーラ・デルヴィーニュ、他)
(混沌度:★★★★★)
チケットぴあ

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