2015年10月2日金曜日

ドローン・オブ・ウォー

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


(ショートバージョン)
アメリカ空軍に所属するトミー・イーガン少佐は、ラスベガスにある基地のコンテナ内にいながら、無人機ドローンをコンピューターで遠隔操作して1万キロ余りも離れた異国の地の爆撃を行っている。クリック一つでミサイルを発射し、1日の任務が終われば、妻モリーと二人の子供が待つ郊外のマイホームに帰る。これがトミーの日常で、異常な現代の戦争の姿だ。実際に戦闘機に乗っていたトミーは、このゲームのような戦争に嫌悪感を感じ、次第に精神的に追いつめられていく…。

アメリカ軍の対テロ戦争で使用されている無人戦闘機ドローンの実態をドライなタッチで描く異色の戦争ドラマ「ドローン・オブ・ウォー」は、「ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督が久し振りに無機質でスタイリッシュなムードを醸し出して“らしさ”を見せた作品だ。実際に戦地に行かずして、深刻なPTSDに苦しむ兵士の姿に、現代の戦争の歪んだ姿をみる思いがする。冷房の効いたコンテナ内でまるでゲームのように爆撃を行うが、それはすべて現実感を伴わない人殺しの行為。しかも中東の最貧国の実態や目を覆うような悪行も画面の中で、はっきりと目にする。CIAの指示で行う任務は電話の声だけで爆撃を指示され、音さえしないクリックでドカン! こんなゲーム感覚の戦争に、大義も正義もあったものではない。これでは主人公トミーが現実の戦場を切望するのもやむを得ないと思うのだ。寡黙なトミーは完全に目が死んでいるが、最後の最後で彼なりの正義で人間性を取り戻す。「ガタカ」とも共通するドライなタッチの戦争映画だが、これがSF映画ではなく、すでに現実であるという事実が一番怖い。
【75点】
(原題「GOOD KILL」)
(アメリカ/アンドリュー・ニコル監督/イーサン・ホーク、ブルース・グリーンウッド、ゾーイ・クラヴィッツ、他)
(淡々度:★★★★☆)
チケットぴあ

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ドローン・オブ・ウォー@ぴあ映画生活