2015年10月28日水曜日

ベトナムの風に吹かれて

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


ベトナムの風に吹かれて (角川文庫)
ベトナム・ハノイで日本語教師として働くみさおは、兄や周囲の反対を押し切って認知症の母シズエを引き取り、ハノイで一緒に暮らすことにする。おおらかなベトナムの人々は、2人を受け入れ、シズエがおかしな行動をとっても言葉が通じなくても、心を通わせていった。だがシズエは事故にあったことをきっかけに認知症が悪化し、みさおは心身ともに疲れ果てていくが…。

原作はベトナム在住の日本語教師・小松みゆきが認知症の母親との体験を綴った「越後のBaちゃんベトナムへ行く」。日本がかつてそうだったように、経済成長著しいベトナムは、今はまだ隣人との距離が近く、人情にあつい国民は、万事がおおらかだ。みさおの母シズエは故郷の新潟から出たことすらないのに、いきなり外国のベトナムか?!と驚くが、認知症のおかげで自分が置かれた状況を把握しておらず、あっさりと現地になじんでしまうのが微笑ましい。前半はかなり楽観的な展開だが、後半は認知症の現実が重くのしかかる。団塊世代にとっては特別な場所、ベトナム。車やバイクがひっきりなしに行きかう喧騒が現代なら、過去は、ベトナム戦争や第二次世界大戦での日本との複雑なかかわりなどの悲劇も。外国での介護生活、現地妻を訪ねる若い女性、かつてスターだった舞台女優、みさおの大学時代の仲間との再会など、エピソードはどれも散漫で描写も浅い。だがしっかり者で楽観的なみさおを演じる松坂慶子のおっとりとした口調、草村礼子の可愛らしさなど、役者がとても魅力的だ。何より、活気あふれるベトナムの空気がいい。介護の実態を描く映画としてみれば物足りなさが多いが、喜びも悲しみもすべて受け入れてこその人生なのだと、この物語は訴えているのだ。初の日本・ベトナム合作映画という点でも注目したい。
【55点】
(原題「ベトナムの風に吹かれて」)
(日本、ベトナム/大森一樹監督/松坂慶子、草村礼子、チャン・ニュオン、他)
(楽観的度:★★★★☆)
チケットぴあ

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