2015年11月4日水曜日

1001グラム ハカリしれない愛のこと

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


1001 GRAMS
ノルウェー国立計量研究所で働くマリエは、計測や測量を行う生真面目な女性研究員。研究所の重鎮である父が病気になり、代わりにフランス・パリ郊外で開催される国際セミナーに出席することに。マリエは“1キロ”の基準となる大切なキログラム原器を持って出席した学会の場で、パイという男性と出会う。彼とは、原器の修理のために再び訪れたパリで再会することになるのだが…。

北欧・ノルウェーを代表する監督ベント・ハーメルの新作「1001グラム ハカリしれない愛のこと」は、計量を専門とする女性の孤独と再生をつづったユニークな人間ドラマだ。「卵の番人」「キッチン・ストーリー」「ホルテンさんのはじめての冒険」など、生真面目な主人公の風変りな人生を淡々とスケッチしてきたハーメル監督が、女性を主人公にした作品を撮るには、初めてのことである。マリエは、計測のエキスパートで、仕事は有能だが、人の心を“計る”ことはできず、結婚生活は失敗し、単調で孤独な毎日を送っている。そんな彼女が、大好きな父の死を乗り越え、一人の男性との出会いを経て、再生してくストーリーでは、計測が人生のメタファーになっている。世界中の重さを決める国際キログラム原器という存在やその意義を初めて知ったが、かつて映画「21グラム」でも語られた、魂の重さのことは本作でもチラリと登場。幸せの基準を決める心のはかりがあること、そしてその方法はひとつではないことを、マリエは徐々に知ることになる。「人生にはカオスが必要だし、基準は安全な答えにすぎない」「人生で一番の重荷は背負うべきものがないこと」など、示唆に富んだセリフがグッとくる。淡々としたユーモアと、美しい構図の様式美など、ハーメル独特の世界観にも魅了された。ヒロインに扮するアーネ・ダール・トルプは劇中ほとんど笑わない。だからこそ、ラストに見せる晴れやかな笑顔に誰もが幸福感を感じるはずだ。
【75点】
(原題「1001GRAMS」)
(ノルウェー・独・仏/ベント・ハーメル監督/アーネ・ダール・トルプ、ロラン・ストーケル、スタイン・ヴィンゲ、他)
(淡々度:★★★★★)
チケットぴあ

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