source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
イギリスの地方都市の一軒家で、穏やかで満ち足りた日々を送る、ジェフとケイトの夫婦は、6日後に結婚45周年の記念パーティーを控えるおしどり夫婦。だがジェフに、1通の手紙が届いたことから、夫婦の日常に変化が訪れる。それは、50年以上前の山岳事故で命を落とした元恋人カチャの遺体が凍結して当時のままの姿で発見されたという内容だった。ジェフは昔の恋人の話をはじめ、ケイトは余裕の表情でそれを聞くが、次第にケイトの心の中に、存在しない女への嫉妬と、夫への不信感が募り始める…。
長年連れ添った夫婦の間に生じる愛の亀裂を描く「さざなみ」。妻が、夫の昔の恋人に嫉妬する。しかもその恋人はすでに死んでいる。嫉妬する必要などあるのか?と思うかもしれないが、山岳事故で氷に閉じ込められ、50年前の若く美しい姿のままの死者に、果たして生者の老いた女が勝てるのだろうか。いや、それよりも、元恋人を「僕のカチャ」と呼んでしまうほど、心の中に大きなウェイトをしめていた夫の“不誠実”を許せるだろうか。この深い内面洞察、嫉妬や不信感によって人間関係がもろくも崩壊する様は、まるで全盛期のイングマル・ベルイマン作品のようで、背筋がゾッとする。監督のアンドリュー・ヘイは、これが長編映画としては3作目だが、大女優シャーロット・ランプリングの存在がこの監督をワンランク上のステージへと押し上げた。ランプリングはF.オゾン監督の「まぼろし」で夫の不在によって精神的に追い詰められる妻を演じたが、本作では、過去に思いをはせる夫への不信感、嫌悪感、怒りや嫉妬などが入り混じった複雑な感情に支配された妻の孤独を、その表情だけで演じ切って、圧巻だ。ランプリングの思慮深い顔に刻まれた深いシワは、いつの時でも美しい年輪だが、本作ほどすごみを感じさせたのは初めてだ。
長年連れ添った夫婦の間に生じる愛の亀裂を描く「さざなみ」。妻が、夫の昔の恋人に嫉妬する。しかもその恋人はすでに死んでいる。嫉妬する必要などあるのか?と思うかもしれないが、山岳事故で氷に閉じ込められ、50年前の若く美しい姿のままの死者に、果たして生者の老いた女が勝てるのだろうか。いや、それよりも、元恋人を「僕のカチャ」と呼んでしまうほど、心の中に大きなウェイトをしめていた夫の“不誠実”を許せるだろうか。この深い内面洞察、嫉妬や不信感によって人間関係がもろくも崩壊する様は、まるで全盛期のイングマル・ベルイマン作品のようで、背筋がゾッとする。監督のアンドリュー・ヘイは、これが長編映画としては3作目だが、大女優シャーロット・ランプリングの存在がこの監督をワンランク上のステージへと押し上げた。ランプリングはF.オゾン監督の「まぼろし」で夫の不在によって精神的に追い詰められる妻を演じたが、本作では、過去に思いをはせる夫への不信感、嫌悪感、怒りや嫉妬などが入り混じった複雑な感情に支配された妻の孤独を、その表情だけで演じ切って、圧巻だ。ランプリングの思慮深い顔に刻まれた深いシワは、いつの時でも美しい年輪だが、本作ほどすごみを感じさせたのは初めてだ。
【70点】
(原題「45 YEARS」)
(イギリス/アンドリュー・ヘイ監督/シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ、ジェラルディン・ジェームズ、他)
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