2016年5月26日木曜日

GARMWARS ガルム・ウォーズ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




遙かなる古代。戦いの星アンヌンには、ガルムと呼ばれるクローン戦士がいて、部族間で果てしない争いを繰り広げている。8つの部族を作った創造主・ダナンが突然去り、残ったのは、空を制するコルンバ、陸を制するブリガ、そして情報技術に長けたクムタクの3部族だけとなる。コルンバの女性飛行士・カラは、ブリガの兵士スケリグとの戦闘の最中、クムタクの老人ウィドと出会う。やがて敵同士である3人には不思議な連帯が生まれる。3人はガルムで神聖視される犬・グラを連れて、海の向こうの遥か彼方にある伝説の聖なる森・ドゥアル・グルンドを目指す旅に出ることになるが…。

戦うためだけに作られたクローン戦士3人が、自らの存在意義を探る旅に出るSFファンタジー「GARMWARS ガルム・ウォーズ」。本作は、アニメ界の鬼才・押井守監督が、構想15年の末に、製作費20億円、オール北米ロケで、海外のスタッフ、キャストと共に完成させた念願の企画だ。偶然にも「THE NEXT GENERATION パトレイバー」「東京無国籍少女」と、実写映画が続く押井監督だが、本作は実写とアニメが融合した、幻想的なビジュアルに仕上がっている。クローン戦士は、何度死んでもその個体の記憶をクローンの脳に転写することで再生を繰り返し、幾世代も生き延びてきた。自分たちは何のために作られ、どこから来てどこへ行くのか。創造主ダナンは、なぜ去っていったのか。それらの答えを知るのは、クムタクの老人ウィドが連れている、絶滅した部族・ドルイドの最後の生き残りであるナシャンだ。創造主ダナンの声を伝える役割を担っていたドルイドの“声”は、クライマックスにようやく聞くことができるが、日本語吹替え(それ自体の出来はかなりいい)だと、その声が聞き取りにくいのが惜しい。凝り性でミリタリー・オタクの押井守監督らしく、空中に浮かぶ戦艦や昆虫を思わせる飛行装置、主要キャラが身にまとう衣装や武器などが個性的で美しく、思わず見入ってしまうほどだ。とりわけ暁や深い森を背景にした戦いは一枚の絵のようである。肉体が変わっても記憶は受け継がれるという設定や、押井作品ではおなじみの川井憲次による詠唱的サウンドは「イノセンス」を連想させる。それにしても本作のヒロインのカラは、今までの押井映画とは少し違って、タフなだけでなく、どこかもろいキャラクターだ。カラとスケルグの間にうっすらと生まれる愛とその顛末も含めて、不安や寂しさを内包したヒロイン像が本作の魅力となっている。
【55点】
(原題「GARMWARS」)
(カナダ・日本/押井守監督/メラニー・サンピエール、ランス・ヘンリクセン、ケヴィン・デュランド、他)
(壮大度:★★★★☆)
チケットぴあ

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