source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
アイルランドの田舎町出身のメアリーは、幼い頃から自然に親しみ、自分のデザインした庭で世界を変えるという夢を持っていた。有名なガーデンデザイナーのシャーロットのアシスタントとして仮採用されるが、デザインノートを盗まれた上にクビになってしまう。どん底のメアリーだったが、ロンドンで毎年開催され世界で最も権威のあるチェルシー・フラワーショーに出て金メダルを取ろうと決意。コネもお金も経験もないメアリーだったが、植物学者でひそかに想いを寄せるクリスティや、ヒッピー風の石職人らの助けを借りて、寄せ集めチームを結成。フラワーショーへと乗り込んでいく…。
ガーデニングの世界に新風を吹き込んだランドスケープ・デザイナー、メアリー・レイノルズの実話に基づくサクセス・ストーリー「フラワーショウ!」。無名のヒロインが、英国王立園芸協会が主催し、世界中が注目するガーデニング世界大会「チェルシー・フラワーショー」で金メダルを取るまでを、テンポよく描いていく。子どもの頃は、妖精の存在を感じ、自然本来の力と美しさを活かした庭作りを目指すメアリーのスタンスは、エコロジーという観点からも現代にマッチしていて、単なるサクセス・ストーリーでは終わらないメッセージも兼ね備えているのだ。高慢な有名デザイナーにひどい目にあってもくじけない。お金もコネも経験もないが、あきらめない。決してへこたれず自分の信念を貫くメアリーが作った庭「ケルトの聖域」は、他のライバルが作る最先端のデザインと華やかさを前面に出した庭とは真逆の、野草とサンザシの木だけという自然そのもののような型破りのデザインだ。だがアイルランドの素朴な風景や、クリスティを追って訪れたエチオピアの原初的な大地の力を感じさせるその庭は、文字通り、世界を変えることになる。クライマックスのフラワーショーでの庭造りのシークエンスが、意外なほどあっさりとしているのは物足りないが、雑草魂を持つヒロインの奮闘があくまで自然体なのがチャーミングで、思わず応援したくなる。勝利や金メダルを目指すガツガツした貪欲さより、人と自然は本来共存するものと信じて進む姿が、さわやかな風を運んでくれる。主演のエマ・グリーンウェルの素朴な笑顔が印象的だ。
【65点】
(原題「DARE TO BE WILD」)
(アイルランド/ヴィヴィアン・デ・コルシィ監督/エマ・グリーンウェル、トム・ヒューズ、クリスティン・マルツァーノ、他)
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