2016年7月24日日曜日

シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




チェコ出身の映像作家アンドレア・クルコヴァは、第三子を妊娠中に妊娠糖尿病と診断される。不安にかられ、砂糖と健康の因果関係を調べ始めた彼女は、生活から砂糖を取り除く困難、砂糖業界の真実などを取材していく。一方で、家族の協力を得て、砂糖の危険性を訴える活動を始めるが…。

砂糖と健康の因果関係を追求したドキュメンタリー「シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ」。少し前にやはり砂糖の弊害を記録した「あまくない砂糖の話」という、監督自らが実験台になって検証するセルフ・ドキュメンタリーがあったが、本作は、妊娠した女性ならではの視点で問題に切り込み、家族と共に砂糖の真実を解き明かすというスタイルだ。共通しているのは、砂糖業界の多国籍企業の健康を度外視した利潤追求の姿勢や、中毒状態になった消費者が砂糖を取り除いた生活に切り替えることの難しさだ。私は本作で、角砂糖発祥の地がチェコだということを初めて知ったが、チェコでは製糖業が盛んで、ごちそうやお祝い事にスイーツは欠かせない。監督の親世代の意識を変えることはかなり難しそうだが、精製された砂糖と同じくらいおいしい食べ物を“砂糖抜きで”作ればいいのだと気づいた監督の家族の食生活は、むしろスタイリッシュで現代の健康志向の波にのっているように思える。それでも、大企業と医療関係者や科学者までもが結託した業界の闇や、糖尿病の患者、政治家らへのインタビューを聞いていると、監督一家の活動は、巨人に素手で立ち向かう小さな子どもの闘いにも感じられた。砂糖を摂取するメリットもあるはずで、本作に、その点の指摘がまったくないのはバランスを欠いているのだが、毎日口に入れる食べ物に関する驚きの真実に、今一度自分のライフスタイルを見直すきっかけになる作品だ。タイトルのシュガー・ブルースとは、1922年にレオナ・ウィリアムズという女性歌手によって歌われた楽曲(初録音は1920年のクライド・マッコイによるもの)。禁酒法時代にアルコールに代わって砂糖を常用した人々が、砂糖を止めたいのに抜けられないという中毒症状を歌った歌だ。うーん、根深い問題である。
【55点】
(原題「SUGAR BLUES」)
(チェコ/アンドレア・クルコヴァ監督/アンドレア・クルコヴァ、キャシー・ドルジン、アデルベルト・ネリセン、他)
(健康志向度:★★★★☆)
チケットぴあ

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