2018年2月20日火曜日

RAW 少女のめざめ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Raw [DVD] [Import]
厳格なベジタリアン一家に育ったジュスティーヌは、両親がかつて通い、現在、姉も在籍する獣医学校に入学し、大学寮に入る。新入生の手荒な通過儀礼は、頭から動物の血を注がれ、生肉を食べること。うさぎの生肉を食べることを強要されたジュスティーヌは、学校に馴染むため、生まれて初めて肉を口にしてしまう。その日を境に、彼女の隠れていた本性が露わになり、次第に変貌を遂げていく…。

肉食の禁断の悦びに目覚めた少女の秘密を描く異色ホラー「RAW 少女のめざめ」。ジャンル分けするならホラーなのだが、実は、思春期の少女の成長物語でもある。といっても青春カニバリズム(人肉喰い)とでも呼びたい極めて特殊な内容だ。監督は、これが長編デビュー作となる仏人女性監督ジュリア・デュクルノー。カニバリズムという血生臭い内容を、こんな風に抒情的に描いてしまうとは、恐れ入った。

肉食の快楽に目覚めてからのジュスティーヌは、人間の理性と魔物の獣性の間でもだえ苦しむ。その様が少女から大人への階段を上るプロセスに見えてしまうのは、ヒロインを演じるガランス・マリリエールの透明感のある色気のせいだろうか。正反対なのにある種の絆で結ばれている姉との関係性や、ルームメイトでゲイの青年との間に芽生えるほのかな恋などがアクセントになっていて、流血描写の間に細やかな心情を描くことも忘れない。野蛮と繊細、理性と本能が荒々しく同居する摩訶不思議な作品だ。終盤の悲劇的な事件を経て、明かされる衝撃の事実まで、目が離せない。カニバリズムと言う特殊性から誰にでもお勧めはできないが、鮮烈な色彩や音楽も含めて、一見の価値がある映画だ。
【65点】
(原題「Grave」)
(仏・ベルギー/ジュリア・デュクルノー監督/ガランス・マリリエール、エラ・ルンプフ、ラバ・ナイト・ウフェラ、他)
(リリカル度:★★★★☆)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)