source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
キャットレディの部屋。壁にかけてある8点のアート作品は全てコルネリス・マキンク作。
アレックスの部屋にある股を広げた女性の絵。これもコルネリス・マキンク。
1960年代後半、コルネリス・マキンクはイギリスに居を構え、ロンドンのセント・キャサリンズ・ドックにある複合施設「S.P.A.C.E.」で、兄のハーマンとスタジオスペースとしてシェアしていました。オプアートやポップアートの作品に満ちた「S.P.A.C.E.」の空気に触発されたコルネリスの絵画を見ると、ビジュアルはソフトポルノ雑誌から直接取られているという感覚があります。そして、それはまさにコルネリスがやっていたことであり、彼はエピスコープで拡大された投影画像の上に、グロテスクな誇張の感覚を加えて描きました。
おそらく、画家でもあるスタンリー・キューブリックの妻クリスティアーヌは、この現代美術のホットスポットを訪れ、『時計じかけのオレンジ』のセットデザインのアイデアを得るべきだと提案したのでしょう。キューブリックは映画でコルネリスの絵を9枚使用しました。
(引用元:DRENCROM.com/CORNELIS MAKKINK)
マキンクという名前でピンと来る方も多いかと思いますが、このコルネリス・マキンク(Cornelis Makkink)は同じく『時計…』に登場した「ザ・ロッキングマシーン」や「「クライスト・アンリミテッド」の作者、ハーマン・マキンクの弟です。1940年生まれで、1937年生まれのハーマンの3歳年下ということになります。
キューブリックにロンドンのアートスポット「S.P.A.C.E.」を訪れるように促したのがクリスティアーヌだったのには驚きました。クリスティアーヌがキューブリック作品に絵画などを提供していたのはよく知られていますが、『2001年宇宙の旅』ではリゲティを発見したり、エイリアンを作ったり、自信喪失して発狂寸前の夫を励まし続けるなど、このマキンクの件を含めても、その「内助の功」っぷりには素晴らしいものがあります。
それにしてもアートのチョイスの基準がいちいちエロなのがキューブリックらしい。おかげでキャットレディはアレックスに「スームカ(醜い)ばばあ」と言われてしまいましたが、悪いのは演じたミリアム・カーリンではなくキューブリックですね。
コルネリス・マキンクは1940年オランダ・アムステルダム生まれ。1993年に胃潰瘍で死去したそうです。享年53歳でした。