source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
繁華街の一角にある小さな食堂に集う人々の人間模様を描く「深夜食堂」。素朴で懐かしい料理の数々が魅力的。
路地裏にある小さな食堂“めしや”。マスターが作る懐かしい味を求めて今日も常連客たちで賑わっていたが、誰かが店の片隅に骨壺を忘れていったことから騒動が巻き起こる。愛人を亡くし新しいパトロンを探すたまこ、めしやで無銭飲食したことがきっかけで住み込みで働くことになった料理人のみちる、福島の被災地から、常連客のあけみに会いに来た謙三…。さまざま人の思惑がめしやの店内で交錯しながら季節は巡っていく…。
原作は、安倍夜郎のコミック。テレビドラマで静かな人気だった物語の劇場版だが、何気ないエピソードを重ねて市井の人々の人情を描くスタイルはそのままだ。劇場版だからといって、ことさら劇的にしたり舞台を広げたりしないところが、好ましい。夜が更けた頃にのれんが出る“めしや”の客は皆、ワケありクセありの人々ばかり。福島の被災地のエピソードを盛り込んで“今”を演出しつつ、こじんまりとした空間で、涙と笑いのエピソードが、丁寧に描かれる。特にドラマ版から続投するマスター役の小林薫の、客と絶妙な距離を保つ大人のキャラがいい。本作ではマスターの日常生活が初めて垣間見えるのが見どころだ。めしやの客は誰もが心に痛みを抱えているのだが「そろそろ自分を赦してやってもいいんじゃないのかい」とのマスターの言葉には泣けてくるはず。料理の腕がたつみちるはいつもちょっと寂しげな表情をしているが、最後にマスターからとろろご飯を作ってもらった後、清々しい顔に変わるのは、マスターの“優しさ”という隠し味のおかげだろうか。また忘れてはいけないのが、どこか懐かしくておいしそうな料理の数々だ。ナポリタン、タコの形の赤いウィンナー、たまご焼き。空腹でこの映画を見るのは厳禁!である。
路地裏にある小さな食堂“めしや”。マスターが作る懐かしい味を求めて今日も常連客たちで賑わっていたが、誰かが店の片隅に骨壺を忘れていったことから騒動が巻き起こる。愛人を亡くし新しいパトロンを探すたまこ、めしやで無銭飲食したことがきっかけで住み込みで働くことになった料理人のみちる、福島の被災地から、常連客のあけみに会いに来た謙三…。さまざま人の思惑がめしやの店内で交錯しながら季節は巡っていく…。
原作は、安倍夜郎のコミック。テレビドラマで静かな人気だった物語の劇場版だが、何気ないエピソードを重ねて市井の人々の人情を描くスタイルはそのままだ。劇場版だからといって、ことさら劇的にしたり舞台を広げたりしないところが、好ましい。夜が更けた頃にのれんが出る“めしや”の客は皆、ワケありクセありの人々ばかり。福島の被災地のエピソードを盛り込んで“今”を演出しつつ、こじんまりとした空間で、涙と笑いのエピソードが、丁寧に描かれる。特にドラマ版から続投するマスター役の小林薫の、客と絶妙な距離を保つ大人のキャラがいい。本作ではマスターの日常生活が初めて垣間見えるのが見どころだ。めしやの客は誰もが心に痛みを抱えているのだが「そろそろ自分を赦してやってもいいんじゃないのかい」とのマスターの言葉には泣けてくるはず。料理の腕がたつみちるはいつもちょっと寂しげな表情をしているが、最後にマスターからとろろご飯を作ってもらった後、清々しい顔に変わるのは、マスターの“優しさ”という隠し味のおかげだろうか。また忘れてはいけないのが、どこか懐かしくておいしそうな料理の数々だ。ナポリタン、タコの形の赤いウィンナー、たまご焼き。空腹でこの映画を見るのは厳禁!である。
【65点】
(原題「深夜食堂」)
(日本/監督/小林薫、高岡早紀、多部未華子、他)
・深夜食堂@ぴあ映画生活