source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
ヴァチカン美術館に世界初の4K3Dカメラが入り名作を紹介するドキュメンタリー「ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口」。絵画を立体化するという試みで、これも美術鑑賞のひとつの方法。
歴代ローマ教皇の収集品を展示する世界最大級の美術館であるヴァチカン美術館の名作の数々を、4K3Dカメラで紹介するアート・ドキュメンタリー。ナビゲート役はヴァチカン美術館館長のアントニオ・パオルッチが務める。
登場するのは、ヴァチカン美術館の出発点となった彫刻「ラオコーン」、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画、「最後の審判」、「ピエタ像」、ラファエロの「アテネの学堂」、「聖ペテロの解放」など。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ジオット、カラヴァッジオらルネサンス絵画の傑作だけでなく、ゴッホ、シャガール、ダリらの近現代の名作もある。ただし時間はわずか66分なので、ラファエロとミケランジェロの両巨匠以外は、さらりとした紹介に留まっている。売りはフルハイビジョンの4倍の画素数の4K、かつ3Dの最新のテクノロジーによる精緻な映像だろう。3Dは画面が暗くなるのが不評なのだが、美術鑑賞で明度や彩度が落ちるのは、美術ファンには不満が残るはずだ。ただ、システィーナ礼拝堂の天井画のような、一般人が絶対に近寄れない作品にカメラが接近し、細部まで詳細に見せてくれるのはありがたい。物足りないと感じるか、手軽で便利と思うかは人それぞれだろうが、これもまた美術の新しい楽しみ方のひとつだし、舞台や演劇を映像化してきた映画の被写体に、美術館が新たに加わったことは、楽しみ方の幅が広がったと言えるだろう。
【50点】
(原題「THE VATICAN MUSEUMS 3」)
(イタリア/マルコ・ピアニジャーニ監督/(監修、ガイド)アントニオ・パオルッチ(日本語ナレーション)石丸謙二郎)
・ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口@ぴあ映画生活