2015年3月1日日曜日

くちびるに歌を

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








心に傷を抱えた音楽教師と生徒たちが合唱によって絆を深める「くちびるに歌を」。美しい風景と子どもたちの素直な演技は好感度大。



長崎県・中五島中学。柏木ユリは、産休を取ることになった親友の代わりに、生まれ故郷の五島列島にある中学の臨時教師となる。よそよそしい態度を崩さないユリは、かつては天才ピアニストとして東京で活躍していたが、ある事件によってピアノを弾くのを止めてしまったのだ。合唱部の顧問をしぶしぶ引き受けたユリは、合唱コンクールに出たいと願う生徒たちに「15年後の自分への手紙を書く」という宿題を出す。明るくふるまっている生徒たちそれぞれに、複雑な事情があることを知ったユリは、次第に生徒たちと向き合っていく。やがてコンクール当日を迎えるが…。



島を舞台に若く美しい女性教師と生徒たちとの心の交流を描くというと、すぐに思い浮かぶのが名作「二十四の瞳」。だがかつて高峰秀子扮する先生が悲しみを抱えた生徒に「先生、何もしてあげられないけど、一緒に泣いてあげる」と言ったのに対し、ガッキー先生はぶっきらぼうで笑顔ひとつ見せない。実は彼女にはピアノが弾けなくなるほどのつらい過去があるのだが、それにしてもこうまで極端な設定では感情移入はなかなか難しいだろう。キャラクターが多いためエピソードがやや散漫なのも気になった。だがそれを補うのは、合唱に懸命に取り組む生徒たちの素朴な魅力だ。屈託なく笑い合う少年少女たちは、実は悲しみを胸に秘めている。特に自閉症の兄を持つ少年サトルのエピソードには思わず涙ぐんだ。15歳の決意と覚悟は、歌うことでのみ昇華されていくのだ。本作はアンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」をモチーフにしたベストセラー青春小説を原作とするが、映画ならではの魅力は、長崎県五島列島の島の美しさを存分に映像に焼き付けたこと。生徒たちが海で、あるいは丘で歌う姿は一枚の絵のように美しく爽やかだ。青春恋愛映画を得意とする三木孝浩監督は、新垣結衣という既存のアイドルスターより、あえてオーディションで選ばれた少年少女たちにフォーカスを当てることで、普遍的な青春物語の“人間ドラマ”を目指したに違いない。

【65点】

(原題「くちびるに歌を」)

(日本/三木孝浩監督/新垣結衣、木村文乃、桐谷健太、他)

(抒情度:★★★★☆)

チケットぴあ



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