2015年3月28日土曜日

ジュピター

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








宇宙の運命を握るヒロインと彼女を守る兵士が地球を救うために戦う壮大なSFアクション「ジュピター」。激しいミスキャストに唖然。



近未来の地球。シカゴで清掃員として働く女性・ジュピターは、遺伝子操作された元兵士のハンター、ケインから、自分が宇宙の未来を変える運命を持つ存在であると告げられる。地球の人々は高度な知性を持った異星人によって管理され、宇宙最大の王朝ではアブラクサス一族の3人の継承者たちが支配権を争っていた。彼らは女王と同じ遺伝子を持つジュピターが地球を引き継ぐことが許せず、全人類を滅ぼそうとしていたのだが…。



ウォシャウスキー姉弟監督の「マトリックス」は誰もが認めるエポックメイキングなSF作品。これ以降、SFアクションすべてが変わったといっても過言ではない。その偉大さは、作った本人たちでさえ越えられないほどだと、改めて思い知った。「マトリックス」以来初の完全オリジナル・ストーリーで挑んだ本作は、確かに驚異的で荘厳なビジュアルがてんこもりなのだが、どれもどこかで見たことがあるようなものばかりで新鮮味がまったくない。地球から飛び立った先はオズの国ならぬ、宇宙の王朝のアブラクサス一族の華麗なる宮殿。そこでの肉親間の争いはシェイクスピアばりの愛憎劇なのだが、これが何とも薄っぺらい。オスカー受賞のエディ・レッドメインが悪役なのが話題だが、悪いヤツというよりむしろキモいヤツ。それを上回るのがマッチョなチャニング・テイタムで、アイラインバッチリのメイクや“エルフ”な尖がり耳はいったい何の冗談なのか。スタイリッシュが売りのウォシャウスキー作品なのに、こうまでミスキャストでは失笑するしかない。ペ・ドゥナやショーン・ビーンなど、豪華な脇キャラがまったく活きてないのも残念。もはやウォシャウスキーの関心は、人物造形ではなく、凝りに凝ったガジェットなど細部のアイテム偏愛に至ったようだ。確かに引力変換・空飛ぶブーツは楽しかったけれど。“マトリックス越え”は作った当事者でさえ難しい。壮大な無駄が微苦笑を誘う珍作とでも評したい。

【40点】

(原題「JUPITER ASCENDING」)

(アメリカ/ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー監督/チャニング・テイタム、ミラ・クニス、ショーン・ビーン、他)

(ミスキャスト度:★★★★★)

チケットぴあ



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ジュピター@ぴあ映画生活