source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
※『時計…』でアレックスにキスを送るホモ囚人(クリックで拡大・・・してしまうので注意)。
もちろんキューブリック自身がホモセクシャルであったかどうかを検証するわけではありません。キューブリック作品内に於いて、ホモセクシャルがどういう扱いをされているかを検証・考察しよう、というのが今回の記事の主旨です。尚、ここでは一般的な用例を基本として「男性同性愛嗜好者」を「ホモセクシャル」「ホモ」と表記いたします。
(1)恐怖と欲望
(2)非常の罠
(3)現金に体を張れ
(4)突撃
ハリウッドに入り込もうとして悪戦苦闘していたこの時代にはそんな余裕もなかったのか、特になし。
(5)スパルタカス
有名な「牡蠣と蝸牛」のシークエンスで、クラサスとアントナイナスの同性愛が示唆されます。このシーンはクラサスがスパルタカスに対して激しく嫉妬(スパルタカスはアントナイナスとバリニアの両方から愛された)する理由を説明するために必要なので、初公開当時に検閲でカットされてしまったのは残念ですね。また、そういった重要なシーンであるからこそ、こうやって復活させたのです。ただ『スパルタカス』についてはキューブリックの関与が薄いため、このシーンでホモセクシャル云々を語るのは難しいでしょう。
(6)ロリータ
特になし。
(7)博士の異常な愛情
リッパー将軍のマンドレイク大佐に対する口ぶりになんとなくホモっ気を感じさせますが、マチズモを体現するようなキャラなので、意図的ではない気がします。
(8)2001年宇宙の旅
HALの声にホモセクシャルな匂いを感じるという論評がありますが、これには受け取る人によって個人差があるでしょう。しかしクラークによるとキューブリックは「ホモっけのあるロボット集団(異星人?)が、我らのヒーロー(ボーマン船長?)に寛いでもらおうと、ビクトリア調風の環境をしつらえる」というトンデモアイデアを出したそう。最終的にこのアイデアはスターゲートを抜けた先の白い部屋のシークエンスの原型になっています。
(9)時計じかけのオレンジ
アレックスが収監された刑務所でホモ囚人がアレックスに色目を使うシーンがあります。原作でのアレックスは、この囚人にベッドを奪われたしまった事に激怒し殴り殺してしまいますが、映画ではそのシーンはカットし、むちゅっとキスを投げかける仕草でコミカルさを強調しています。また、原作には登場しない作家のヘルパージュリアンは、なんとなくマッチョ・ホモを感じさせるキャラクターになっています。
(10)バリー・リンドン
追いはぎにあったバリーは、ホモセクシャルの将校が沐浴している隙にプロシア軍の制服と階級章を手に入れます。このシーン原作にはないオリジナルで、キューブリックは「バリーをイギリス軍から脱出させる簡単な方法として採用した。コミカルな状況(ホモ将校の沐浴シーン)はその意図を隠すため」と説明しています。
(11)シャイニング
よく話題になる「犬男とタキシード紳士」です。原作では他にも幽霊は登場しているのですが、何故かキューブリックはこの幽霊をチョイス。しかも原作にはないホモ行為を示唆するシチュエーションに改変しています。
(12)フルメタル・ジャケット
ジョーカーの配属先の上司、ロックハート中尉は原作には登場しないオリジナルキャラですが、「濡れた芝を見てみたい」などと語り、何故かちょっとホモっけがある事を伺わせるキャラクターになっています。
(13)アイズ ワイド シャット
原作では単に「嫌な感じの男」としか言及されていないホテルのフロント係ですが、クラーク(デスクのクラーク〈Desk Clerk〉という韻を踏んだダジャレのネーミングでしょうね)という名前を与えられ、しかもホモセクシャルという設定に。イケメンのビルに終始色目を使っています。
以上のように、(8)以降のほぼ全ての作品にホモネタがあります。しかも(10)(12)(13)は原作にはないのにあえて登場させています。また原作準拠であっても、笑いを誘いやすくするようにキャラクターやシチュエーションをコミカルに強調しています。この事から、キューブリックは劇中内で「ちょっと笑いが欲しい」というシーンで使う定番ネタのひとつだった事が伺えます。
結論:まあ、堅苦しく検証するまでもなく(8)のトンデモアイデアに象徴されるように、キューブリックが観客の笑いをとるために使った定番ネタのひとつ。つまりキューブリック作品でホモネタが登場したらそれは「笑うところ」です。困惑などせず、大いに笑ってあげましょう。