2015年3月24日火曜日

陽だまりハウスでマラソンを

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








元五輪マラソン金メダリストがフルマラソンに再挑戦する姿を描く「陽だまりハウスでマラソンを」。高齢者の尊厳をきちんと描いた佳作。



パウルはオリンピック金メダリストの元マラソン選手。妻マーゴが倒れたことをきっかけに老人ホームに入居するが、子供だましのレクリエーションや規則に縛られるホームの対応に不満を募らせ、走ることを決意しベルリンマラソン出場を宣言する。最初はあきれていた妻や嘲笑した入居者の老人たちは、完走を目標に頑張る彼の姿を見て、応援するようになるが…。



ほのぼのとした邦題がついているが独語の原題の意味は「彼の最後の走り」。内容は、思った以上にリアルで切実な物語だ。1956年のメルボルン・オリンピックの金メダリストのパウルは今やすっかり老いたが、いざ走ると決意すれば、昔取った杵柄、トレーニングも本格的だし、レース運びも周到だ。だが老人ホームは、そんな彼を異分子とみなし規律を乱すと決めつけている。施設は設備も介護も行き届いているが、職員は、老人たちを死を待つだけの“終わった人間”と決めつけているのだ。確かに高齢者は死と隣り合わせだが、それでも、人生を楽しみ何かに挑戦し、人として尊厳を持って生きるべきなのだと映画は訴えている。だがこの作品の優れている点は、単に老人側の言い分だけを描かない点だ。高齢化社会を支える、中堅世代の苦労や現実にもきちんと目配せしている。そんなやるせない環境の中、パウルのフルマラソン完走という“年寄りの冷や水”がカッコいい。何より、「自分たちは風と海。いつも一緒だ」という仲睦まじく信頼し合う老夫婦が最高に素敵だ。主演のディーター・ハラーフォルデンはドイツの国民的喜劇俳優で、本作でドイツ映画賞史上最高齢の最優秀主演男優賞を受賞。彼の味わい深い演技と、実際のベルリンマラソンで撮影されたクライマックスのレースの場面に感動が押し寄せる。地味な老人映画と侮ってはいけない。鑑賞後のさわやかさが心地よい人生賛歌だ。

【65点】

(原題「Sein letztes Rennen/BACK ON TRACK」)

(ドイツ/キリアン・リートホーフ監督/ディーター・ハラーフォルデン、ターチャ・サイブト、ハイケ・マカッシュ、他)

(チャレンジ度:★★★★☆)

チケットぴあ



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