source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
中学生たちが校内裁判を開き男子生徒転落事件の真実を暴くサスペンス「ソロモンの偽証 後篇・裁判」。子供たちもいいが、前篇で情けなかった大人たちの本音と覚悟も見どころ。
男子中学生・柏木卓也の転落死事件の真実を知るため校内裁判が開かれようとしていた。出廷を拒否していた被告人で問題児の大出俊次や、事件のショックを引きずり沈黙を続ける三宅樹理などがついに裁判に出廷。検事を務める藤野涼子、他校生ながら被告人の弁護人を務める神原和彦らが、生徒だけでなく、校長、刑事ら大人たちをも証言台に立たせる。それぞれが胸に秘めた思いを語り始め、思いもよらない真実が明らかになるのだが…。
前篇は事件が起こりさまざまな謎が提示されるミステリーだったが、いよいよ始まった裁判を描く後篇は、息詰まる法廷劇だ。“口先だけの偽善者”という言葉が頭から離れず、大人たちの保身や混乱を目の当たりにしたヒロインの藤野涼子は、前代未聞の子供による校内裁判を開く。告発状で名指しされた大出は本当に犯人か、謎めいた神原の真意とは、藤野涼子は真実に辿りつけるのか。これらの謎解きは映画を見て確かめてほしいが、法的に効力がないとはいえ、校内裁判の描写は緊張感にあふれ見事なものだ。じわじわと核心に近づくにつれ、浮かび上がるのは、他校生・神原がなぜこの裁判に参加しているのかという最初から不可解だった謎。そのことが転落事件のすべての鍵となる。法廷劇として濃密なだけでなく、脇のエピソードを重ねることで、子供たちの成長ドラマ、親子愛、不条理がまかり通る現代社会への警鐘など、多面的なドラマが浮かび上がる構成も素晴らしい。前篇では固く口を閉ざすだけで、へたれっぷりが情けなかった大人たちが、実は彼らもまた真実に懸命に向き合っていたのだと分かる展開は、感動的でさえある。特に、一見考えなしで嘘を重ねているように見えるが実は非難の矛先を娘から自分に向かうように仕向けている、永作博美演じる母親の屈折した愛情は強烈だ。大人は嘘をつく。それは時には愛する誰かを守るためだ。だがどんなに傷ついても真実に向き合うことで、子供たちは成長する。鑑賞後、語り合いたくなる作品だ。
男子中学生・柏木卓也の転落死事件の真実を知るため校内裁判が開かれようとしていた。出廷を拒否していた被告人で問題児の大出俊次や、事件のショックを引きずり沈黙を続ける三宅樹理などがついに裁判に出廷。検事を務める藤野涼子、他校生ながら被告人の弁護人を務める神原和彦らが、生徒だけでなく、校長、刑事ら大人たちをも証言台に立たせる。それぞれが胸に秘めた思いを語り始め、思いもよらない真実が明らかになるのだが…。
前篇は事件が起こりさまざまな謎が提示されるミステリーだったが、いよいよ始まった裁判を描く後篇は、息詰まる法廷劇だ。“口先だけの偽善者”という言葉が頭から離れず、大人たちの保身や混乱を目の当たりにしたヒロインの藤野涼子は、前代未聞の子供による校内裁判を開く。告発状で名指しされた大出は本当に犯人か、謎めいた神原の真意とは、藤野涼子は真実に辿りつけるのか。これらの謎解きは映画を見て確かめてほしいが、法的に効力がないとはいえ、校内裁判の描写は緊張感にあふれ見事なものだ。じわじわと核心に近づくにつれ、浮かび上がるのは、他校生・神原がなぜこの裁判に参加しているのかという最初から不可解だった謎。そのことが転落事件のすべての鍵となる。法廷劇として濃密なだけでなく、脇のエピソードを重ねることで、子供たちの成長ドラマ、親子愛、不条理がまかり通る現代社会への警鐘など、多面的なドラマが浮かび上がる構成も素晴らしい。前篇では固く口を閉ざすだけで、へたれっぷりが情けなかった大人たちが、実は彼らもまた真実に懸命に向き合っていたのだと分かる展開は、感動的でさえある。特に、一見考えなしで嘘を重ねているように見えるが実は非難の矛先を娘から自分に向かうように仕向けている、永作博美演じる母親の屈折した愛情は強烈だ。大人は嘘をつく。それは時には愛する誰かを守るためだ。だがどんなに傷ついても真実に向き合うことで、子供たちは成長する。鑑賞後、語り合いたくなる作品だ。
【75点】
(原題「ソロモンの偽証 後篇・裁判」)
(日本/成島出監督/藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、他)
・ソロモンの偽証 後篇・裁判@ぴあ映画生活