2015年4月13日月曜日

ギリシャに消えた嘘

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








人を殺め逃避行をする夫婦と彼らに巻き込まれた青年の運命を描くサスペンス「ギリシャに消えた嘘」。謎解きの醍醐味やスリルはないが、クラシカルな魅力が楽しめる。



1962年のギリシャ、アテネ。ツアーガイドの青年ライダルは、優雅なアメリカ人紳士チェスターと彼の若くて美しい妻コレットに出会う。だがリッチそうなチェスターの裏の顔は詐欺師で、ホテルを訪ねてきた探偵を誤って殺してしまう。ホテルに偶然居合わせたライダルは、国外逃亡を図る夫妻と同行することに。クレタ島へと向かった3人は警察に追われるが、やがてライダルとコレットが親密になり、3人の関係に変化が訪れる…。



原作は「太陽がいっぱい」の作者として有名なパトリシア・ハイスミスの「殺意の迷宮」。ギリシャやトルコでロケされた地中海のムードが異国情緒を醸し出し、1960年代のクラシックな衣装もまた優雅だ。クラシックなのは衣装だけではない。この物語、殺人事件は起こるが、ミステリーやサスペンスとしては、いささか弱い。イマドキの派手なチェイスや血生臭い描写があるわけでもない、クラシックというより古めかしい展開なのだ。では見どころがないかと言えば、決してそうではない。詐欺師のチェスターに父親の面影を重ねるライダルの屈折した感情、コレットと親密になるライダル、チェスターとの歪な三角関係、ニヒルなチェスターが警察に追いつめられた上、嫉妬にかられて弱さを暴露していくなど、心理劇として見るならば、かなり見ごたえがある上質なドラマだ。製作陣が、渋いスパイ映画「裏切りのサーカス」のスタッフというのも納得がいく。ラスト、イスタンブールの路地裏での思いもよらない運命の後に、随所で語られるギリシャ神話のメタファーが浮かび上がった。

【60点】

(原題「TWO FACES OF JANUARY」)

(英・仏・米/ホセイン・アミニ監督/ヴィゴ・モーテンセン、キルステン・ダンスト、オスカー・アイザック、他)

(エレガント度:★★★★☆)

チケットぴあ



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