2015年4月6日月曜日

【ブログ記事】オードリー・ヘップバーンがキューブリックに宛てた『ナポレオン』出演依頼辞退のメモ

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック




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 キューブリックは、『ナポレオン』のナポレオンの妻ジョゼフィーヌ役にオードリー・ヘップバーンにオファーを出していた事はここで記事にしましたが、そのヘップバーンがキューブリックに宛てた辞退のメモをご紹介します。



 内容は「お手紙ありがとう。私はあなたが私と一緒に仕事をしたがっているというだけで満足です」「わたしはしばらく働きたくないので、このプロジェクトに参加する事はできません」という、表現は柔らかいですがはっきりと断りの意思を表しています。このメモが手紙の下書きなのか、それとも何かの機会にキューブリックに手渡されたものなのか不明ですが、wikiにあるサインと比較してみても、本物と思って良さそうです。



 日付は1968年11月、まさに『ナポレオン』のプリプロダクション真っ最中です。この頃のヘップバーンといえば、家族との生活を優先させるために事実上の女優業引退状態で、いくらキューブリックのオファーといえども首を縦に降る可能性はありませんでした。キューブリックがヘップバーンにジョゼフィーヌ役をオファーした理由は、当時のヘップバーンの人気の高さもあったでしょう。大金がかかる歴史物の超大作ですから、スターが出演するとなると出資金を集めやすいですし、それなりの興行成績も見込めますので。



 でもキューブリックはナポレオンのロシア遠征を描いた『戦争と平和』で、ヘップバーンがジョゼフィーヌとは全く別のロシア貴族の妹主役で主演していたのをどう思っていたのでしょう?このハリウッド版『戦争と平和』はヒットし、アカデミーやゴールデングローブの各賞を受賞。現在はともかく、当時はそれなりに評価されていた有名な作品です。「『戦争と平和』でヒロインを演じたヘップバーンが、今度は『ナポレオン』の妻役に抜擢!」という宣伝効果も狙っていたのでしょうか?キューブリックとヘップバーン。この両者の接点が全く見いだせないので、「人気取り」や「話題性」以外の理由が見つかりません。キューブリックがヘップバーンの天真爛漫な所謂「ヒロイン演技」を望むとはとても思えませんし、史実のジョゼフィーヌはかなりキツい印象の女性です。ヘップバーンとは全くイメージが異なるのですが・・・。



 結局『ナポレオン』はお蔵入りになってしまうのですが、キューブリックにとってはとても残念だったでしょうけど、ヘップバーンの辞退は非常にいい判断でしたね。もし撮影に入っていたら、何回もテイクを繰り返し、執拗なまでにアドリブでアイデアを求め続けるキューブリックに、ヘップバーンの繊細な神経が持ったかどうか。ヘップバーンはキャラクター性でスターになった女優です。演技力は素人同然ですし、その事は本人もよく分かっていたようです。でも、その「キャラクター性」にキューブリックがぞっこんだった可能性もありますね。なんといっても奥さん(クリスティアーヌ)もその可愛らしいキャラクター性が魅力の女優でした。ヘップバーンのキャスティングの理由がキューブリックの「単に好みのタイプの女性だったから」だとしたら、ちょっと面白いのですが(笑。





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※ヘップバーンが主役の一人を演じたナポレオン戦争を題材にした歴史大作『戦争と平和』。