2015年5月26日火曜日

チャッピー

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


チャッピー
無垢な人工知能のロボットと人間たちとの関わりを描くSFアクション・ドラマ「チャッピー」。設定はありがちだが、ラストには意表をつかれた。

2016年、凶悪犯罪が後を絶たない南アのヨハネスブルグ。街の治安は兵器会社が作る警察ロボットによってかろうじて保たれていた。研究所のロボット開発者・ディオンは、世界で唯一、自身で考え、感じ、成長することができる自立型ロボットをこっそり開発する。だが、ロボットはストリートギャングにさらわれ、ギャングを手本にさまざまなことを学んでしまう…。

タイトルは、人工知能A.I.を搭載したロボットに付けられた名前。起動したばかりの無垢な赤ちゃんのようなチャッピーは、驚くべき速さでさまざまなことを学習する。育ての親のストリートギャングの男女はパパとママになり、さまざまな犯罪を仕込むが、チャッピーは生みの親・ディランから教えられた優しさや善意をも持ち合わせている。チャッピーを単純な善悪に描きわけないのは、そこに人間の本質を投影し、警鐘を鳴らしているからだ。ギャングのカップルは、確かにワルだが、次第に彼らに共感してしまうのは、ギャングなど足元にも及ばない、悪質な研究所員の存在があるから。この敵役をヒュー・ジャックマンが怪演に近い熱演で演じるのが面白い。モーション・キャプチャーで演じるシャールト・コプリーも見事だ。物語の入口は、異形の人造人間「フランケンシュタイン」あるいは「シザーハンズ」に似ているが、最終的には予想もつかない決着を見る。思えばニール・ブロムカンプ監督はデビュー作の「第9地区」でも決して人間に味方しなかった。チャッピーは人間になりたいピノキオとは本質的に異なる。生きたい。それがチャッピーの願いだ。過激なアクションの向こう側に切ない“人間”ドラマが透けて見える。
【75点】
(原題「CHAPPIE」)
(アメリカ/ニール・ブロムカンプ監督/シャールト・コプリー、ヒュー・ジャックマン、シガーニー・ウィーヴァー、他)
(警鐘度:★★★★☆)
チケットぴあ

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