source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
わが子の死に遭遇した主人公がとっさに選んだ行動が予想もしない事態を巻き起こすサスペンス「真夜中のゆりかご」。平凡な日常から、倫理感を揺さぶる衝撃に至るストーリーが、いかにもビア監督らしい。
刑事のアンドレアスは生まれたばかりの息子を、妻アナと交代で寝かせつける幸福な日々を送っていた。一方、仕事で通報を受けて駆けつけた現場で、トリスタンとアナの薬物中毒のカップルが、赤ん坊を育児放棄しているのを見てショックを受け、他人事とは思えなくなる。そんな時、アンドレアス夫妻の息子が突然死するという悲劇が起こる。動揺し錯乱するアナを眠らせたアンドレアスは、ジャンキー・カップルの子と自分の子の遺体を取り替える…。
「未来を生きる君たちへ」でオスカーを受賞したデンマークのスサンネ・ビア監督。ワールド・ワイドな問題をとりあげてメッセージを発した作品で高く評価されたが、本作は、家庭、夫婦という小宇宙に立ち戻り、人間の倫理観、善意と悪意、格差社会などの問題をサスペンスタッチで丁寧に描写した。そこから浮き彫りになるのは、愛という感情の多面性である。刑事のアンドレアスが突然死した息子を、他人の赤ん坊と取り替えるという常軌を逸した行動に出るのは、息子の死で錯乱する妻アナをなだめるため。だがそれと同じくらい、仕事で目撃した、トリスタンとサネのジャンキー・カップルが育児放棄した赤ん坊の、あまりにむごい姿を目撃し、この子を救わねばという気持ちがあったはずだ。善意からくる悪、悪意から生まれる善が、やがて、思いもよらない結果を生みだす。それは皮肉と衝撃が混在する真実が導く運命だ。サスペンスなので、詳細は明かせないが、2組のカップルは共に、男性と女性とでは、考え方や本能が大きく異なるのが興味深い。アンドレアスはある種の“境界線”を踏み越えてしまうが、彼はどこかですべてが明るみに出るのを望んでいるかのように見える。育児放棄、虐待、貧困に格差と、思わず目を背けたくなるような描写に沈痛な気持ちになるが、ラスト、サネ母子を物陰からみつめるアンドレアスの姿に、深い余韻が漂った。
刑事のアンドレアスは生まれたばかりの息子を、妻アナと交代で寝かせつける幸福な日々を送っていた。一方、仕事で通報を受けて駆けつけた現場で、トリスタンとアナの薬物中毒のカップルが、赤ん坊を育児放棄しているのを見てショックを受け、他人事とは思えなくなる。そんな時、アンドレアス夫妻の息子が突然死するという悲劇が起こる。動揺し錯乱するアナを眠らせたアンドレアスは、ジャンキー・カップルの子と自分の子の遺体を取り替える…。
「未来を生きる君たちへ」でオスカーを受賞したデンマークのスサンネ・ビア監督。ワールド・ワイドな問題をとりあげてメッセージを発した作品で高く評価されたが、本作は、家庭、夫婦という小宇宙に立ち戻り、人間の倫理観、善意と悪意、格差社会などの問題をサスペンスタッチで丁寧に描写した。そこから浮き彫りになるのは、愛という感情の多面性である。刑事のアンドレアスが突然死した息子を、他人の赤ん坊と取り替えるという常軌を逸した行動に出るのは、息子の死で錯乱する妻アナをなだめるため。だがそれと同じくらい、仕事で目撃した、トリスタンとサネのジャンキー・カップルが育児放棄した赤ん坊の、あまりにむごい姿を目撃し、この子を救わねばという気持ちがあったはずだ。善意からくる悪、悪意から生まれる善が、やがて、思いもよらない結果を生みだす。それは皮肉と衝撃が混在する真実が導く運命だ。サスペンスなので、詳細は明かせないが、2組のカップルは共に、男性と女性とでは、考え方や本能が大きく異なるのが興味深い。アンドレアスはある種の“境界線”を踏み越えてしまうが、彼はどこかですべてが明るみに出るのを望んでいるかのように見える。育児放棄、虐待、貧困に格差と、思わず目を背けたくなるような描写に沈痛な気持ちになるが、ラスト、サネ母子を物陰からみつめるアンドレアスの姿に、深い余韻が漂った。
【65点】
(原題「A SECOND CHANCE/EN CHANCE TIL」)
(デンマーク/スサンネ・ビア監督/ニコライ・コスター=ワルドー、ウルリッヒ・トムセン、マリア・ボネヴィー、他)
・真夜中のゆりかご@ぴあ映画生活