source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
(ショートバージョン)
フランスからの独立運動が高まる1954年のアルジェリア。元軍人で今は小学校の教師をしているダリュのもとに、殺人の容疑をかけられたアラブ人のモハメドが連行されてくる。ダリュは、モハメドを裁判にかけるため山の向こうの町まで送ることになるが、復讐を誓うものたちの襲撃や反乱軍の襲撃に遭遇。共に危機を切り抜けるうちに、二人の間には友情が芽生え始める…。
文豪アルベール・カミュの短編小説「客」をベースにしたロードムービー「涙するまで、生きる」は、静かなたたずまいだが、不条理や葛藤がじわりと浮かび上がり、たとえ無力だとしても行動しなければならないと訴える。モハメドの罪と動機は、聞けばあまりにも悲劇的だが、彼は、残された者を守るため、自らの名誉を保つため、最も望ましい形の死を切望するしかないのだ。一方で、教師ダリュの諦念の表情には、フランス人なのにアルジェリアで生まれ育ち、アンデンティティーを模索し続けたカミュの宙ぶらりんの姿がダブる。それでも、命をかけて荒涼とした道を行く2人がやがて友情を育み、ついにはある決断を下すラストでは「決してあきらめるな」というメッセージがこだまするのだ。英語、スペイン語を話すデンマーク人の国際俳優ヴィゴ・モーテンセンは、本作ではフランス語とアラビア語を話している。この俳優の無国籍なムードが、民族間の対立による憎悪の無意味さを俯瞰しているようにみえる。
文豪アルベール・カミュの短編小説「客」をベースにしたロードムービー「涙するまで、生きる」は、静かなたたずまいだが、不条理や葛藤がじわりと浮かび上がり、たとえ無力だとしても行動しなければならないと訴える。モハメドの罪と動機は、聞けばあまりにも悲劇的だが、彼は、残された者を守るため、自らの名誉を保つため、最も望ましい形の死を切望するしかないのだ。一方で、教師ダリュの諦念の表情には、フランス人なのにアルジェリアで生まれ育ち、アンデンティティーを模索し続けたカミュの宙ぶらりんの姿がダブる。それでも、命をかけて荒涼とした道を行く2人がやがて友情を育み、ついにはある決断を下すラストでは「決してあきらめるな」というメッセージがこだまするのだ。英語、スペイン語を話すデンマーク人の国際俳優ヴィゴ・モーテンセンは、本作ではフランス語とアラビア語を話している。この俳優の無国籍なムードが、民族間の対立による憎悪の無意味さを俯瞰しているようにみえる。
【65点】
(原題「LOIN DES HOMMES/FAR FROM MEN」)
(フランス/ダヴィド・オロファン監督/ヴィゴ・モーテンセン、レダ・カテブ、アンヘラ・モリーナ、他)