2015年8月6日木曜日

それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




(ショートバージョン)
2011年に始まった民主化運動「アラブの春」の影響を受けたシリア。当時19歳でサッカーのユース代表のゴールキーパーであるバセットと、バセットの友人で有名な市民カメラマンである24歳のオサマの2人が立ち上がる。バセットは歌で、オサマは映像で、非暴力の抵抗運動を先導し民主化運動の中心的存在になっていくが、2012年2月の政府軍の容赦ない弾圧と武力攻撃から、バセットと仲間たちは武器をとって戦い始める…。

シリアのホムスの街で活動する青年たちを追ったドキュメンタリー「それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと」は、サンダンス映画祭をはじめ、世界の映画祭で多くの賞を受賞した問題作だ。シリアでは今もなお、政府軍と反体制派による武力衝突が続いている。この作品はシリアでの戦闘を通して、非暴力で活動する若者が、どういう経緯で武器を手にするに至るかを追うものだ。シリア内戦の実情は、実は外国勢力の介入もあり、さらに宗教対立もあって、簡単に理解するのは難しい。ホムスは“革命の首都”と呼ばれるが、バセットとオサマの2人は、ふるさとであるこの街を取り戻すという“正義”のもとに戦っている。だがそれは別の角度から見れば「人を殺す」という歴然とした行為だ。平和的な革命など存在しないのだと突きつけられた気分だが、戦争・革命という名の暴力を、2人の若者の精神的な変遷から捕えたリアリティに深く考えさせられる。
【60点】
(原題「RETURN TO HOMS」)
(アメリカ/タラール・デルキ監督/アブドゥル・バセット・アルサルート、オサマ・アルホムシ、他)
(熾烈度:★★★★☆)
チケットぴあ

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