2015年9月18日金曜日

黒衣の刺客

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




(ショートバージョン)
唐代の中国。13年前に誘拐されたインニャンが両親のもとに帰ってくる。しかし彼女は女道士の手によって暗殺者に育てられ、戻ってきたのは、かつての許婚で今は地方財政を牛耳る暴君となっているテェン・ジアンを暗殺するためだった。だが、どうしてもテェン・ジアンに止めをさすことができなかったインニャンは、暗殺者としての自分に疑問を感じてしまう。ある時、任務中に窮地に追い込まれたインニャンは、遣唐使船の日本人青年に助けられるが…。

台湾の名匠・ホウ・シャオシェン監督による耽美的な武侠映画「黒衣の刺客」。セリフも少なく説明もほとんどないので、ストーリーの細部を理解するのは正直難しい。最強の暗殺者となったヒロインがかつての許婚を殺めることができず、人間性を取り戻すというのが概略だ。武侠アクションだが痛快や爽快とは無縁で、すっきりしないストーリーは、時に退屈に思えるはず。だが困ったことにこの映画、見る価値がある。なぜなら全編すべて圧倒的な映像美に満ちているのだ。水墨画を思わせる草原、深い緑、切り立った崖など自然描写は壮麗のひと言。一方で、衣装や、家具調度品などの美術の細やかさ、室内をろうそくの炎で照らす幻想的なカメラワークは、官能的だ。映像があまりに美しすぎて、ヒロインをはじめキャラクターの心情が伝わりにくいという皮肉さえ感じるほど。女刺客を助ける日本人青年の役で妻夫木聡が参加しているが、重要な役にも関わらず存在感は極めて希薄。だがこれは彼の責任ではなく、映画全体の演出によるものだ。ホウ・シャオシェン監督が、アクションという意外性のあるジャンルに挑戦していることが最大の見どころといえようか。
【55点】
(原題「THE ASSASSIN」)
(台湾/ ホウ・シャオシェン監督/スー・チー、チャン・チェン、妻夫木聡、他)
(映像美度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
黒衣の刺客@ぴあ映画生活