source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
北海道・旭川の地方裁判所判事だった鷲田完治は、妻子ある身でありながら、愛した恋人を失ってしまう。それから25年、完治は自らを罰するかのように、判事の職も家族も捨てて、釧路の地で国選弁護人しか引き受けない弁護士として、孤独の中に生きてきた。そんなある日、弁護を担当した25歳の椎名敦子が完治のもとを訪ね、ある人を探してほしいと頼み込む。家族に見放され一人で生きてきた敦子との出会いにより完治の止まっていた時間が動き始め、敦子もまた完治に心を開いていく…。
直木賞作家・桜木紫乃の短編小説を映画化したヒューマン・ドラマ「起終点駅 ターミナル」は、過去にとらわれ、孤独に生きてきた男の再生の物語だ。愛した女性が自分の重荷になるのを嫌い、目の前で命を絶つという衝撃は、完治を打ちのめし、その後の25年間はずっと、贖罪の日々を送っている。死んだも同然の完治の前に現われ、複雑な事情を抱えた敦子もまた、誰からも見捨てられ死んだような目をして孤独に生きてきた。55歳の初老の男性と25歳の若い女性の関係は、淡い恋愛感情があったとしても、むしろ互いをいたわる親愛の関係だ。北海道・釧路の荒涼とした景色の中、ふとしたきっかけで敦子に料理を振る舞うことになった完治が作る“北国の御馳走”がいい。人間関係を避け孤独に生きる主人公もまた、一緒に食事をする相手がいることによって心がほぐれていくと雄弁に物語っていた。佐藤浩市はベテランらしく表情だけで背負った哀しみを表し、さすがの演技力なだけに、相手役の本田翼の力量不足がかえって目立ってしまったのは残念。これはいったいいつの時代?と思わず首をかしげたくなるほど、古色蒼然としたドラマだが、時の流れに取り残された男の再生の物語には、その方がむしろしっくりくるかもしれない。
直木賞作家・桜木紫乃の短編小説を映画化したヒューマン・ドラマ「起終点駅 ターミナル」は、過去にとらわれ、孤独に生きてきた男の再生の物語だ。愛した女性が自分の重荷になるのを嫌い、目の前で命を絶つという衝撃は、完治を打ちのめし、その後の25年間はずっと、贖罪の日々を送っている。死んだも同然の完治の前に現われ、複雑な事情を抱えた敦子もまた、誰からも見捨てられ死んだような目をして孤独に生きてきた。55歳の初老の男性と25歳の若い女性の関係は、淡い恋愛感情があったとしても、むしろ互いをいたわる親愛の関係だ。北海道・釧路の荒涼とした景色の中、ふとしたきっかけで敦子に料理を振る舞うことになった完治が作る“北国の御馳走”がいい。人間関係を避け孤独に生きる主人公もまた、一緒に食事をする相手がいることによって心がほぐれていくと雄弁に物語っていた。佐藤浩市はベテランらしく表情だけで背負った哀しみを表し、さすがの演技力なだけに、相手役の本田翼の力量不足がかえって目立ってしまったのは残念。これはいったいいつの時代?と思わず首をかしげたくなるほど、古色蒼然としたドラマだが、時の流れに取り残された男の再生の物語には、その方がむしろしっくりくるかもしれない。
【60点】
(原題「起終点駅 ターミナル」)
(日本/篠原哲雄監督/佐藤浩市、本田翼、尾野真千子、他)
(寒々しさ度:★★★★☆)
・起終点駅 ターミナル@ぴあ映画生活