2015年11月26日木曜日

ムーン・ウォーカーズ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




1969年。人類初の月面着陸を目標にしたアポロ計画がなかなか成功しないNASAを見かねた米国政府は、映画「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック監督にアポロ11号月面着陸映像のねつ造を依頼することを決定。CIA諜報員キッドマンをキューブリックがいるロンドンに送り込むが、キッドマンは、偶然出会った借金まみれのダメ男・ジョニーに莫大な製作費をだまし取られてしまう。キッドマンはただちに金を取り返しに向かうが、次第にギャングやヒッピー、そしてCIAが入り乱れて、事態は混迷していく…。

今もまことしやかに囁かれる“アポロ計画陰謀論”をテーマにした異色コメディー「ムーン・ウォーカーズ」。権力者側が映像を捏造し国民を騙すという設定は、映画「ワグ・ザ・ドッグ」でも描かれていたが、このアポロ11号月面着陸フェイク説は、著名人もその説を肯定するなど、なかなか有名な都市伝説なのだ。真偽のほどはこのさい置いておくとして、本作は1960年代のスウィンギング・ロンドンが背景になっているのが見どころである。ヒッピー文化やサイケデリックな色彩、ミニスカートなどのファッションと、レトロ・モダンなポップ・カルチャーがふんだんに登場する。ベトナム戦争帰りのコワモテCIA諜報員を演じるロン・パールマンと、優柔不断でひ弱なジョニーという凸凹コンビは見ていて楽しいし、何より、すべてが幻覚作用のような噛み合わない雰囲気は60年代という時代そのものを連想させる。物語は正直ユルユルで、登場人物たちは何か、勝手にドタバタしているだけのような印象が否めない。さらに言えば、後半の銃撃戦での流血や残酷描写は、不必要な気も。ブラックな笑いと皮肉な内容は悪くないのに、演出に問題ありの残念な作品になってしまったが、ラストシーンはなかなかアイロニカルだった。
【50点】
(原題「Moonwalkers」)
(仏・ベルギー/アントワーヌ・バルドー=ジャケ監督/ルパート・グリント、ロン・パールマン、ロバート・シーハン、他)
(笑い度:★★★☆☆☆)
チケットぴあ

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ムーン・ウォーカーズ@ぴあ映画生活