source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
1890年。オスマン帝国から日本へ派遣されていた親善使節団をのせた軍艦エルトゥールル号が座礁して大破、和歌山県串本町沖で沈没する。乗組員500名以上が海に投げ出され、そのほとんどが命を落とすが、医師の田村と助手のハルら、地元住民が総出で救出活動にあたり、69名の命を助ける。1985年。イラン・イラク戦争中のイラン・テヘランでは、空爆が続き、日本政府は危機的状況を理由に在イラン日本人の救出を断念する。そんな中、トルコ政府は日本人のために救援機を差し向けることを決断する…。
日本とトルコの友好の絆を“1890年エルトゥールル号海難事故編”と“1985年テヘラン邦人救出編”の2部構成で描く「海難1890」。日本とトルコの間にこんな歴史秘話があったことを、私はこの映画で初めて知った。いわゆる美談という類の話だが、1890年、まだ外国人の姿さえ珍しい時代に貧しい村人が「人を助けたい」という思いだけで、救助活動を行う真摯な姿は感動的で胸を打つ。一方で、1985年のテヘランからの脱出劇は、近過去ということもあって、リアルでサスペンスフルだ。2015年は日本とトルコの友好125周年にあたる。日本・トルコ両国の全面協力で作られた本作は、人が人を思いやる気持ちには国境など関係ない、両国の交流は政治レベルより民間レベルが支えていて、それは今も続いているというメッセージが込められている。全面的に賛成だし、映画はもちろん、いい話だ。だがひとつだけひっかかるのは、イラン・イラク戦争の時、日本政府があっさりと邦人救出をあきらめたことに、ほとんど触れていない点だ。資料には、就航便がなかったことがその原因とあるが、政治的な理由があったにせよ、日本政府の対応に失望を感じるのは私だけではないはずだ。一方で、フセインの暴挙の前で、日本人に手を差し伸べてくれたトルコ政府の決断は、まさに英断。感謝の言葉しかない。忽那汐里とトルコ人俳優ケナン・エジェの両俳優が、1890年編と1985年編の両方に出演することで、大切なメッセージが時と場所を越えてつながったように感じられた。
日本とトルコの友好の絆を“1890年エルトゥールル号海難事故編”と“1985年テヘラン邦人救出編”の2部構成で描く「海難1890」。日本とトルコの間にこんな歴史秘話があったことを、私はこの映画で初めて知った。いわゆる美談という類の話だが、1890年、まだ外国人の姿さえ珍しい時代に貧しい村人が「人を助けたい」という思いだけで、救助活動を行う真摯な姿は感動的で胸を打つ。一方で、1985年のテヘランからの脱出劇は、近過去ということもあって、リアルでサスペンスフルだ。2015年は日本とトルコの友好125周年にあたる。日本・トルコ両国の全面協力で作られた本作は、人が人を思いやる気持ちには国境など関係ない、両国の交流は政治レベルより民間レベルが支えていて、それは今も続いているというメッセージが込められている。全面的に賛成だし、映画はもちろん、いい話だ。だがひとつだけひっかかるのは、イラン・イラク戦争の時、日本政府があっさりと邦人救出をあきらめたことに、ほとんど触れていない点だ。資料には、就航便がなかったことがその原因とあるが、政治的な理由があったにせよ、日本政府の対応に失望を感じるのは私だけではないはずだ。一方で、フセインの暴挙の前で、日本人に手を差し伸べてくれたトルコ政府の決断は、まさに英断。感謝の言葉しかない。忽那汐里とトルコ人俳優ケナン・エジェの両俳優が、1890年編と1985年編の両方に出演することで、大切なメッセージが時と場所を越えてつながったように感じられた。
【65点】
(原題「海難1890」)
(日本・トルコ/田中光敏監督/内野聖陽、忽那汐里、夏川結衣、他)