source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
25歳の千恵は、新聞社に勤める恋人の信吾との幸せな未来を夢見ていたが、ある日、乳がんと診断される。千恵を支えると決心した信吾と結婚し、苦しい治療を乗り越えて奇跡的に、妊娠、出産し、娘のはなを授かった。だが、親子3人の幸福な日々は長くは続かず、がんが再発することに。規則正しい生活と和食中心の食生活によって千恵の健康状態は落ち着くが、余命を覚悟した彼女は、自分がいなくなっても困らないようにと、はなにみそ汁の作り方を教えはじめる…。
がんのため、33歳の若さで亡くなった安武千恵さんが5歳の娘や夫、家族との日々をつづったブログを基にしたエッセイを映画化したヒューマン・ドラマ「はなちゃんのみそ汁」。はなちゃんとは、奇跡的に妊娠した千恵さんが、命がけで生んだ愛娘の名前だ。映画は、いわゆる難病ものなのだが、本作は不思議と暗くない。というのも、安武夫妻は、どんなに苦しい状況でもユーモアを忘れない、前向きな人たちだからだ。そのため物語も決してお涙頂戴にはならず、悲しい場面の演出も淡々としていて好感が持てる。夫妻は、がんの治療を、民間療法に委ねるが、このことに関しては、書籍やテレビドラマ化されたときに賛否両論を巻き起こしたそう。がんというあまりにも難しい病に対する向き合い方はさまざまだが、この映画を見て改めて考えてみたり、親しい人と話し合ってみるのもいいだろう。だがこの映画が本当に伝えたいのは、闘病生活でも治療法の是非でもない。限りある日々を支えあって生きた家族の素晴らしさなのだ。がんと闘う千恵さんのために懸命に頑張る夫の信吾さん、精神的にも肉体的にも金銭的にもタフな状態だった信吾さんをそっと応援する友人や家族、そして自分がいなくなった後の家族に精一杯何かを残そうとする千恵さん。誰もが誰かを思いやる姿は、悲しみだけでなく、ともに生きた喜びを伝えてくれた。こういう映画は、わかっていても泣かされるので困ってしまう。
【60点】
(原題「はなちゃんのみそ汁」)
(日本/阿久根知昭監督/広末涼子、滝藤賢一、一青窈、他、他)
・はなちゃんのみそ汁 @ぴあ映画生活