2016年1月9日土曜日

クリムゾン・ピーク

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Ost: Crimson Peak
20世紀初頭のアメリカ、ニューヨーク。10歳のとき、死んだ母の幽霊と遭遇して以来、イーディスは、霊を見ることができるようになる。ある日、母の亡霊から「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という不思議な警告を受ける。成長し作家になる夢を抱いたイーディスだったが、謎めいた英国人男性トーマスと運命的な恋に落ち、結婚。英国に移り住むことに。トーマスの姉ルシールとともに暮らすようになったその屋敷は、山頂にある広大なゴシック建築で、冬になると地表に露出した赤粘土が雪を赤く染めることから“クリムゾン・ピーク”と呼ばれていた。イーディスが新しい生活に慣れてきた頃、体を真紅に染めた亡霊たちがイーディスの前に次々に現れ、奇妙な警告をする。やがてイーディスは、屋敷と姉弟に隠された衝撃的な秘密を知ることになるのだが…。

鬼才ギレルモ・デル・トロ監督によるゴシック・ロマン「クリムゾン・ピーク」。朽ち果てた古い屋敷、いわくありげな美しい姉弟、屋敷に隠された秘密に亡霊たちの警告…と、怪奇幻想ムード満載のミステリーホラーだが、正直、怖さはほとんとない。むしろ美しさを堪能する作品だ。母親の亡霊のビジュアルが強烈すぎてビビッたのだろうか、せっかくの警告をヒロインのイーディスはまったく活かせない。母の亡霊は、大人になり本当に危機に陥った娘をサポートするかと思えばそういうわけではない。イーディスをめぐるトーマスと幼馴染の医者アランとの恋愛描写も、中途半端な印象だ。ミステリーなので謎解きの詳細は明かせないが、終盤のバトルは強引すぎるし、そもそもこの対決、必要なのか?!と首をかしげた。だがそれでもなお、この作品に引きこまれるのは、ギレルモ・デル・トロ監督ならではの美意識が画面の隅々まで行き届いていて、完璧に幻想世界を作り上げているから。さらにワシコウスカ、ヒドルストン、チャステインというキャスティングの妙が効いている。特に姉ルシールを演じるジェシカ・チャステインは、今、最もノッている女優の一人だけあって、底知れない狂気と美しさをたたえていた。物語の細部より、ダークで華麗な映像美を楽しみたい作品だ。
【60点】
(原題「CRIMSON PEAK」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン、他)
(耽美度:★★★★★)
チケットぴあ

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クリムゾン・ピーク@ぴあ映画生活