2016年3月28日月曜日

リップヴァンウィンクルの花嫁

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


リップヴァンウィンクルの花嫁
東京。派遣教員の皆川七海はSNSで知り合った鉄也と結婚し、結婚式の代理出席を、なんでも屋の安室に依頼する。結婚早々、鉄也の浮気が発覚するが、義母から逆に浮気の罪をかぶせられ、家を追い出される。安室は、苦境に立たされた七海に奇妙なバイトを次々と紹介する。代理出席のバイトに続いて斡旋されたのは、月100万円も稼げる住み込みのメイドだった。七海は、破天荒で自由なメイド仲間の里中真白と出会い、親しくなるが…。

流されて生きてきた女性の変化と自立を独特の感性で描く人間ドラマ「リップヴァンウィンクルの花嫁」。まったりとした緊張感というと、矛盾に聞こえるかもしれないが、そういう表現がしっくりくる。180分の長尺の映画では、SNS、なんでも屋、疑似家族、AV女優、コスプレと、現代社会の病巣ともいえるテーマがてんこもりだが、それを岩井俊二監督らしい、淡くまどろむような映像で描写する。主人公の七海は、世間知らずで無防備、いや、むしろ無知で愚かだ。前半、彼女にふりかかる不幸の大半は、自らの意志や防衛本能に欠ける本人の責任。さしたる理由もなく悪事を重ねる安室もまた、つかみどころのない男だ。とてもじゃないがキャラクターに感情移入できないのだが、だからこそ、終盤のヒロインの怒涛の変化に引き付けられる。ミュージシャンでもあるCoccoが演じる真白の登場から、黒木華のコスプレの妙もあって、物語は虚実の境がますます曖昧に。これはもしやファンタジーなのか。作品の賛否は分かれるだろうし、そもそもワケがわからないという感想を持つ観客も多いだろう。だが「四月物語」をハードに再構築したような本作は、今まで味わったことがない奇妙なテイストの成長物語だ。タイトルの「リップ・ヴァン・ウィンクル」とは19世紀の米文学で、森の奥で眠り込んだ主人公が目覚めたら20年がたっていて世界はすっかり変わっていたという、西洋版の浦島太郎のような物語である。七海という女性は長い間夢の中にいて、真白との出会いで目覚めた後は、問答無用のハッピーエンドを手繰り寄せてしまうのだ。その時、世界は決定的に変化する。
【60点】
(原題「リップヴァンウィンクルの花嫁」)
(日本/岩井俊二監督/黒木華、綾野剛、Cocco、他)
(成長度:★★★★☆)
チケットぴあ

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