2016年3月7日月曜日

星ガ丘ワンダーランド

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


星ガ丘ワンダーランド オリジナル・サウンドトラック
星ガ丘駅の落し物預り所で働く、内向的な青年・温人(はると)は、落とし物の持ち主や、どのようにして落とし物がここに届けられたのかを想像しながら似顔絵を描くのを日課にしていた。ある時、20年前に自分と家族を捨てて家を出た母が、星ガ丘ワンダーランドで自殺したという訃報を受け取る。母の死をきっかけに、温人は、長い間連絡を取っていなかった兄の哲人と再会、近くで暮らしていた義理の姉弟とも出会うことに。なぜ母は閉園した遊園地で命を絶ったのか。その真相を探るうちに、自らも知らなかった過去と向き合うことになる…。

人気CMを多く手掛けるクリエイターで映像作家の柳沢翔が映画初監督に挑んだミステリー風味の人間ドラマ「星ガ丘ワンダーランド」。穏やかだが、心のうちに暗いわだかまりを内包する主人公が、母の死の謎を探るうちに、閉ざしていた過去と向き合っていく。母の死の真相は終盤に唐突にわかる仕掛けで、ミステリーとしては弱いのだが、壊れてしまった家族と心を閉ざした青年の再生のドラマとしてみれば、詩的な映像と共に、胸に迫る。映像クリエイターだけあって、雪景色の中の赤い手袋や、蔦で覆われ、どこか浮世離れした落とし物預かり所のたたずまい、ライトアップした遊園地の観覧車など、淡い光を多用した映像がファンタジックで美しく、しばしばハッとさせられた。だが物語は、エピソードが中途半端なものが多く、消化不良の感は否めない。落書きした傘を探した後の顛末やゴミ清掃会社の青年とのやりとりなど、心象風景と重なるものが効果的だっただけに、少し残念だ。主人公役の中村倫也、義妹役の佐々木希のほか、市原隼人、新井浩文、菅田将暉、松重豊、木村佳乃、杏と、主役級の豪華キャストが集まっている。ミステリーやドラマとしての弱さはあるが、原作ものやリメイクばかりの昨今、オリジナル脚本で映画を作った気概を評価したい。
【55点】
(原題「星ガ丘ワンダーランド」)
(日本/柳沢翔監督/中村倫也、新井浩文、佐々木希、他)
(映像美度:★★★☆☆)
チケットぴあ

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星ガ丘ワンダーランド@ぴあ映画生活