source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
巨額の資産を持つある大物弁護士が自宅で殺害される事件が発生。容疑者は17歳の息子マイクだった。逮捕され拘留後、誰にも心を開かず完全黙秘を続ける少年の弁護を引き受けたのは、一家と交流がある敏腕弁護士ラムゼイ。開廷された裁判では、マイクの有罪を裏付ける証言が次々に繰り広げられる。被害者の妻であり容疑者の母という複雑な立場のロレッタや、ラムゼイの助手を務める女性弁護士ジャネルらが見守る中、裁判は進むが、証言する誰もが嘘をついていた。有罪が確定するかに見えた矢先、ついに被告人のマイクが沈黙を破って衝撃的な告白をはじめるが…。
真実のみを語るべき法廷で次々に繰り出される嘘に敏腕弁護士が挑む法廷ミステリー「砂上の法廷」。少しわかりにくい邦題がついているが、原題「THE WHOLE TRUTH」の意味は「すべての真実」。邦題は、真実のみを述べる法廷でさえもその正義はもろいものだという意味だろうか。見終わると、原題、邦題の両方とも納得できる内容だ。本作では、全員が嘘をついているという設定で、証言台に立つ人間の言葉と、そこに挿入される映像の差異によって、嘘を表現している。嘘の理由は、保身もあれば、思いやりの場合もあり、少しばかりの利益のこともある。理由はさまざまだが、終盤になるにつれて、嘘が大掛かりになっていく仕掛けだ。そのためラムゼイは、嘘を見抜く鋭い観察眼を持つジャネルを雇い「証人は誰もが嘘をつく。そして僕も…」と言って、自分より経験の浅いジャネルに、法廷での駆け引きというテクニックを教えていくのだ。マイクの衝撃の告白とその先に待つさらなる驚愕の事実は、少々唐突すぎて面食らうのだが、法廷に一人座るラムゼイの独白で始まるこの物語では、勘のいい観客には、予想可能かもしれない。映画の性質上、ネタバレはできないが、何よりも“驚愕の事実”は、容疑者の母ロレッタを演じるレニー・ゼルウィガーの容姿の変貌ぶりだ。正直言うと、映画の途中まで、この人がゼルウィガーだと気づかなかったほど、すっかり老け込み、激痩せで顔はしわだらけ。どんでん返しにも影響するロレッタが、こんなにも地味で魅力に欠けるキャラクターでいいのか?!と強く問いたい。
【50点】
(原題「THE WHOLE TRUTH」)
(アメリカ/コートニー・ハント監督/キアヌ・リーヴス、レニー・ゼルウィガー、ググ・ンバータ=ロー、他)