2016年4月25日月曜日

太陽

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


太陽
ウイルスにより人類の大半が死滅した21世紀初頭。人類は、太陽の光に弱く夜にしか生きられない新人類・ノクスと、ノクスに管理されながら太陽の下で貧しく暮らすキュリオと呼ばれる旧人類に分かれていた。キュリオの青年・鉄彦はノクスになりたいと切望しているが、幼馴染の結は、自分と父を捨ててノクスになった母への嫌悪から、ノクスを憎んでいた。そんな時、ノクスによる経済封鎖が10年ぶりに解かれ、長年封鎖されていたゲートが空き、門衛として新たなノクスの駐在員・森繁がやって来る。鉄彦は、再開されたノクスへの転換手術の抽選に応募し、森繁とも親しくなるが…。

劇団イキウメを率いる劇作家で演出家、前川知大の舞台劇を映画化した異色SFドラマ「太陽」。SFといっても特別なビジュアルはなく、まるで20世紀初頭の日本の山村のような貧しい暮らしをするキュリオの世界で、ほとんどの物語が展開する。描かれるのは、どんなコミュニティでも必ず生じる人間の属性による格差だ。ノクスとキュリオとの歴然とした差はもちろんのこと、キュリオの中にも異なる考え方があり、おのずと格差が生まれる。ノクスに憧れる鉄彦は転換手術にただ一人応募し当然選ばれるものと思っていたのだが、本人は望んでいないのに結の父が応募してしまうことから、物語は思わぬ方向へ。さらに本来交わるはずのない、鉄彦と森繁の間に奇妙な友情が生まれ、彼らの未来を変えていく。異なる種が共存する道がひとつのテーマだが、一方で、貧しくても人と人との距離が近いキュリオ、洗練された文明社会だが無機質に暮らすノクスの、どちらが幸福な生き方なのかとも問いかける。ただ、この映画、元が舞台というだけあって、長回しや、ほとんどアップを使用しない引きの映像で占められているので、せっかくの若手俳優の演技があまり堪能できない。神木隆之介が、絶叫演技ばかりなので、少々辟易するのも事実。演出の方向性なのだからやむを得ないのだろうが、この若手実力派俳優は、繊細な表情が素晴らしいのに…と、ちょっと残念だった。ラストはある旅立ちを描き、明確な答えは出していない。このエンディングに希望を感じることができれば、未来はよりよくなるのだろう。
【55点】
(原題「太陽」)
(日本/入江悠監督/神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、他)
(格差度:★★★★★☆)
チケットぴあ

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