source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
1960年代初頭のロンドン。双子のギャング、レジーとロンのクレイ兄弟は、暴力で対立組織を潰すなど、手段を選ばない方法でのし上がっていく。さらにアメリカのギャングと手を組み、有力者やセレブとも密接な関係を築く等、イギリス社会に大きな影響を及ぼしていた。そんな中、レジーは部下の妹である可憐な美女フランシスと恋に落ちて結婚。彼女の願いで堅気になろうとするが、精神を病んだロンと兄弟の母親がフランシスを嫌い、家族間に不協和音が生じてしまう。さらに、組織内での対立、警察の執拗な調査などで、クレイ兄弟は追い詰められていく…。
実在した双子のギャングのクレイ兄弟の半生を描く「レジェンド 狂気の美学」。2人は一卵性双生児、つまり切りたくても断ち切れない関係を持つ運命共同体だ。兄レジーは、ハンサムで頭が切れ、人望があってビジネスの才覚もある男。タフガイだが、まっとうな商売で生きようと試みるのも愛する女性のためという純情も併せ持つ。では弟で片割れのロンはどうか。ぽっちゃりした体形、薬が必須なほど情緒不安定、凶暴で残虐、同性愛者であることを公言する。組織を揺るがすトラブルを何度も起こし、レジーの妻フランシスのことも嫌悪している。結局、レジーは、組織、ロン、フランシスの板挟みになるのだが、頭では何が最善の選択なのか理解していても、生まれる前から結ばれている絆は断ち切れず、自分の肉体の半身であるロンを見捨てられずに悲劇的な運命をたどることになる。一卵性の双子の性(サガ)とは、他人にはうかがい知れないほど特別なのだろう。語り部はフランシスなので、どうしてもレジー寄りになってしまう物語の性質上、ロンの内面に深く踏み込んでないのは惜しいが、双子を一人二役で演じ分けるトム・ハーディの名演があまりにも秀逸だ。もともと上手い役者で、なりきり型のカメレオン俳優だが、今回はまるで自分自身と共演するのを楽しんでいるかのよう。正反対のようでいて、暴力性や狂気という点では結局は共通している双子の潜在的な性質、レジーとロンのどこか笑いを誘うような掛け合い、流行のスーツを着こなし高級車であらわれるさっそうとした美しさと、ハーディの魅力が全開だ。スウィンギング・ロンドンの時代の空気も上手く描き込まれている。実録クライム・サスペンスにして、デフォルメされた伝説、そして残酷なおとぎ話のようなテイストも兼ね備えている異色作だ。
【75点】
(原題「LEGEND」)
(英・仏/ブライアン・ヘルゲランド監督/トム・ハーディ、エミリー・ブラウニング、ポール・アンダーソン、他)
・レジェンド 狂気の美学|映画情報のぴあ映画生活