2016年9月11日日曜日

【撮影・技術】順撮り

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック


順撮り
※『バリー…』を撮影中のキューブリック。後ろ左に次女のアンヤ、真後ろの三女のヴィヴィアンがいるのが見える。

 映画やテレビドラマなどの撮影で、シナリオの冒頭から順を追って撮影を進める方法。ふつうは、経費節約や出演者の都合などから、同じロケーションでの撮影をまとめて行うことが多いが、俳優が役作りをするのに有効だとしてこの手法をとることがある。

(引用先:コトバンク「順撮り」


 キューブリックは基本的に順撮りで撮影を行っていました。というのも、当初の脚本から撮影現場でアドリブを加えて撮影内容を変化させていくので、ロケーションごとにまとめ撮りしてしまうと辻褄が合わなくなってしまうからです。例外は『2001年…』で、特撮シーンが多く、セット完成の順番もまちまちだったため、かなりのシーンを同時進行で撮影していたようです。『フルメタル…』は出演者が散髪して丸坊主になるために「戦場シーン→訓練シーン」と映画とは逆の順番で撮影されました。

 『アイズ…』は撮影が長期に渡った影響もあって、クルーズがどんどん疲弊していく様がリアルに捕らえられています。『シャイニング』も同じくシェリー・デュバルが疲弊して行き、加えてあまりにも多いテイクの繰り返しに極限状態まで追い込まれています。こういった効果は撮影にテイク数や時間の制限をかけず「順撮り」したからこそ。もちろんこれはキューブリックが自身の努力によって勝ち得た「特権」なのですが、通常は予算や納期の縛りから「まとめ撮り・数テイクでOKを出す」が原則なので、そういった制限に縛られてしまう一連の監督とキューブリックとの差は歴然としていますね。