source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
『時計…』で、アレックスの部屋にあった近未来的ターンテーブル(レコードプレーヤー)です。ラストの病室のシーンで、キャスターに乗っていたのもこれになります。『時計…』は予算が厳しかったせいか、極力ロケや既存の商品に頼って撮影されていますが、このターンテーブルも実際に商品として販売されていたものです。メーカーはデヴィッド・ギャモンが設立したトランススクリプト社で、この「トランススクリプト・ハイドロリック・リファレンス・ターンテーブル」は1964年に発売されたものです。
メーカーのHPによると、1969年にボアハムウッドにあった工場にキューブリックがやってきて、最新のプロジェクトの為にこのターンテーブルを購入できないか訊ねたそうです。そしてデイヴィッドはキューブリックにこの「ハイドロリック・リファレンス・ターンテーブル」を譲ったのだそう。
「ハイドロリック・リファレンス・ターンテーブル」は劇中では使用させず、代わりに使われたのがミニカセット(マイクロカセットではない。ミニカセットはフィリップ社の規格、マイクロカセットはオリンパスの規格)でした。キューブリックはアナログレコードの後はカセット、しかもミニカセットが普及すると考えていたんですね。しかしこのサイズのテープスピードではオーディオ用としてははあまりにも音質が悪く、普及したのは主にメモ録音用や留守番電話のメッセージ録音用などでした。劇中のようにオーディオ用ミニカセットが発売された事実はなく、第九やリゲティのカセットテープや、セットされたカセットデッキは全て小道具として創作されたものです。しかし世界にはマニアはいるもので、完全再現したレプリカを製作した方がいらっしゃいます。因みに音源はCD化されているので入手は容易です。
ところでこのターンテーブル、eBayなどでは20~30万円で入手できます。オーディオマニアなら手が出せない金額ではなさそう。音質云々は日本語での情報がないのでわかりませんが、日本のオーディオマニアにはあまり評価されていないんでしょうか? プロダクトデザインとしての評価がこの値段なら、ちょっと手を出しにくいかも知れないですね。