source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
2029年。すでにミュータントの大半が死滅し、X-MENの存在は人々から忘れられていた。年老いて、かつてのパワーを失ったウルヴァリンは、衰弱しきったプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアの世話をしながら、ローガンの名でメキシコ国境の町で身を隠すように生きていた。ある日、ローガンは、一人の看護師から、ローラという謎めいた少女を、カナダ国境の近くのノースダコタまで送り届けてほしいと頼まれ、困惑する。ほとんど言葉を発せず、ローガンに似た特徴とすさまじい戦闘能力を持つその少女は、謎の武装組織から追われ命を狙われていた。その争いに巻き込まれたローガンは、チャールズと共に車に乗り、ローラを連れてノースダコタを目指す旅に出る…。
「X-MEN」シリーズの人気キャラクター、ウルヴァリンのスピンオフシリーズの最終章「LOGAN/ローガン」。年を取り、傷ついたローガン(ウルヴァリン)の壮絶な生き様を描くものだ。アメコミ映画にして堂々のR指定というだけあって、容赦ないヴァイオレンス描写に凄みがあるが、それ以上に、ウルヴァリンの最後の戦いを描く大人のドラマに仕上がっている。髪やヒゲには白いものが混じり、老眼鏡をかけ、走ると息が切れるウルヴァリンには、往年の猛々しさはない。アダマンチウムの爪の伸びは悪く、治癒能力も衰えた彼は、もはや不死身ではないのだ。生きる気力も目的もなく世捨て人のように暮らすウルヴァリンが、ボケ老人のようになったプロフェッサーXの世話をする様は、老々介護のようで切なくなる。特殊能力を持つヒーローの晩年は、成れの果てという言葉が似あう哀愁が漂うが、そこに過激なカンフル剤のように登場するのが謎めいた少女ローラだ。ウルヴァリンとローラ、プロフェッサーXが車に同乗し北を目指すあたりからロード・ムービーとなり、ジェームズ・マンゴールド監督が偏愛する西部劇へのオマージュが色濃く現れる。思えば2000年に「X-MEN」でウルヴァリンが初登場して以来、私たちファンはずっとウルヴァリンと共に旅をしてきたようなものだ。ミュータントの最後の希望であるローラを守り抜くウルヴァリンの死闘の悲壮感、滅びゆく自分の運命を受け入れたその表情には、あきらめと共に、長く孤独な人生から解放される、かすかな安堵感も見て取れる。愛を失い続けたウルヴァリンが、最後にたどり着く境地は涙なくしては見られない。滅びの美学を体現したこの最終章に、ウルヴァリンを演じ切ったヒュー・ジャックマンの覚悟を感じた。さようなら、ウルヴァリン。「X-MEN」はミュータントを描くシリーズだが、本作は見事なまでに“人間”を描いたドラマになって私たちに別れを告げる。
「X-MEN」シリーズの人気キャラクター、ウルヴァリンのスピンオフシリーズの最終章「LOGAN/ローガン」。年を取り、傷ついたローガン(ウルヴァリン)の壮絶な生き様を描くものだ。アメコミ映画にして堂々のR指定というだけあって、容赦ないヴァイオレンス描写に凄みがあるが、それ以上に、ウルヴァリンの最後の戦いを描く大人のドラマに仕上がっている。髪やヒゲには白いものが混じり、老眼鏡をかけ、走ると息が切れるウルヴァリンには、往年の猛々しさはない。アダマンチウムの爪の伸びは悪く、治癒能力も衰えた彼は、もはや不死身ではないのだ。生きる気力も目的もなく世捨て人のように暮らすウルヴァリンが、ボケ老人のようになったプロフェッサーXの世話をする様は、老々介護のようで切なくなる。特殊能力を持つヒーローの晩年は、成れの果てという言葉が似あう哀愁が漂うが、そこに過激なカンフル剤のように登場するのが謎めいた少女ローラだ。ウルヴァリンとローラ、プロフェッサーXが車に同乗し北を目指すあたりからロード・ムービーとなり、ジェームズ・マンゴールド監督が偏愛する西部劇へのオマージュが色濃く現れる。思えば2000年に「X-MEN」でウルヴァリンが初登場して以来、私たちファンはずっとウルヴァリンと共に旅をしてきたようなものだ。ミュータントの最後の希望であるローラを守り抜くウルヴァリンの死闘の悲壮感、滅びゆく自分の運命を受け入れたその表情には、あきらめと共に、長く孤独な人生から解放される、かすかな安堵感も見て取れる。愛を失い続けたウルヴァリンが、最後にたどり着く境地は涙なくしては見られない。滅びの美学を体現したこの最終章に、ウルヴァリンを演じ切ったヒュー・ジャックマンの覚悟を感じた。さようなら、ウルヴァリン。「X-MEN」はミュータントを描くシリーズだが、本作は見事なまでに“人間”を描いたドラマになって私たちに別れを告げる。
【85点】
(原題「LOGAN」)
(アメリカ/ジェームズ・マンゴールド監督/ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、ダフネ・キーン、他)
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