2017年9月26日火曜日

ユリゴコロ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


ユリゴコロ (双葉文庫)
カフェを営む亮介の平穏な日常は、父が余命宣告され、さらに婚約者の千絵が失踪するという事態で、突如崩れ去ってしまう。失意の亮介は、父が住む実家で“ユリゴコロ”と書かれたノートを発見。そこには、人間の死でしか、生きていくための拠りどころを感じられない殺人者・美紗子の告白の物語がつづられていた。繰り返される殺人、友人の自殺、自分を心から愛してくれる男性・洋介との出会い…。これは創作か、事実か。誰が何のために書いたのか。なぜ自分はこれほどまでにこのノートに惹きつけられるのか。そんな時、亮介のもとに、千絵とかつて同僚だったという女性が、千絵の伝言を持って現れる…。

人間が死ぬ瞬間を見ることを唯一の心の拠りどころとして殺人を繰り返す女の壮絶な人生を描くミステリー「ユリゴコロ」。原作は沼田まほかるの同名小説で、いわゆる“イヤミス(読後にいやな気分になるミステリー)”と呼ばれるジャンルだ。映画は、亮介が読む手記の中の過去の物語と、亮介と父、失踪した婚約者・千絵らの現在のパートが交錯しながら、進んでいく。

殺人でしか心が満たされないという設定上、かなり凄惨な描写が登場するが、同じく死に取りつかれた美紗子の友人・みつ子のリストカットといった、殺人とは少し違う流血場面も相当に生々しい。ミステリーなので詳細は明かさないが、ノートに引きこまれる前半が心をザワつかせる異様なサスペンスなのに対し、後半は一気にラブストーリーに傾き、トーンダウンする感は否めない。さらに終盤には衝撃の事実が用意されているが、これが、あまりに偶然に頼る設定なのが、気になった。とはいえ、終始、暗い情念を感じさせるヒロイン役の吉高由里子は熱演だし、心に深い傷を抱えながら美紗子を愛し抜く洋介を演じる松山ケンイチもいい。サイコ・スリラーから純愛ラブストーリー、そして家族愛のドラマへ。テイストの変化がこの作品の個性だろう。
【60点】
(原題「ユリゴコロ」)
(日本/熊澤尚人監督/吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、他)
(流血度:★★★★☆)
チケットぴあ

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