2017年10月27日金曜日

【関連動画】ユーチューバーのNostalgiaCriticがドラマ版「シャイニング」をレビュー

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック




和訳してくれたRoots4BOSSさん、感謝です。

 ユーチューバーのNostalgiaCriticが、スティーブン・キングが制作したTV版『シャイニング』を、キューブリックの映画版と比較しつつ、辛辣批評した動画です。キューブリック版のパロディ満載で、いかにCriticがキューブリック版が好きかが伝わってきますね。

 個人的にはほぼこの動画と同意見ですが、彼が見出した唯一の「TV版のいいところ」さえ管理人は評価していません。原作では「アル中で癇癪持ちの超絶ダメ親父だが、息子を愛する気持ちだけは本当だった」という「瞬間」に感動するのですが、TV版では「それなりに素敵なパパ」に見えるスティーブン・ウェバーがキャスティングされたため、この「落差」が緩くなってしまっています。それにウェンディ役のレベッカ・デモーネイも違和感があります。原作のジャックはウェンディの「気の利かない愚鈍な女」っぷりを「これでもか」というばかりに貶します(原作では夫婦の不和も重要な要素)が、デモーネイが美人すぎ、また行動も機知に富んでいるので「気の利かない女」要素を全く感じさせません。ダニーに至っては終始口元の緩さが気になってしまい、「聡明な少年」という印象が全くありません。キューブリックが原作を改変したのはそれなりに「意図」があり、その「意図」に最適なキャスティングをしたと感じましたが、原作至上主義者のキングが何故こんな「ダメキャスティング」を許してしまったのか理解に苦しみます。

 そのためTV版のラストシーンは、ジャックの心理描写、恐怖シーンの積み上げ、キャスティングの失敗などを挽回するための「感動ゴリ押し改悪」にか見えなくなってしまっています。管理人はこの「感動ゴリ押し」に「感動」できるほど純粋ではないようで「ふーん」で終わってしまいました。原作の穏やかで平和なラストシーンをそのまま映像化した方が、余韻が残って感動できると思います。

 そんなこんなでとってもダメダメなTV版ですが、管理人が考える「TV版のいいところ」がひとつだけあります。それは「映画版を酷評したキングが制作したTV版があまりにも酷かったため、逆に映画版の評価が高まった」点です。このTV版が制作されるまで原作ファンは映画版を「なぜ小説の通りに映像化しなかったんだ!」と酷評していました。映画版が公開時にラジー賞にノミネートされた事実もそれを物語っています。しかしこのTV版が放映されたあと、原作ファンは手のひらを返して映画版を賞賛しはじめます。つまりキューブリックの言う「小説と映画は全く違った媒体」「小説をそのまま映像化しても上手くいかくとは限らない」を原作ファンが真に理解したからです。「キューブリックはホラーのなんたるかを理解していない」と豪語していたキングは、皮肉なことに「いかにキューブリックの映画版がすぐれているか」を身を以て証明してしまったのです。最近のキングのキューブリック批判を見ても、自身が制作したTV版に全く触れないことからも、キングにとってもこのTV版は「黒歴史」と自覚しているようです。

 キューブリックファンにとって、キングのキューブリック批判なんて蚊に刺された程度にも感じません(「キューブリック批判をしない」がTV版の制作条件だったはずなので、いいかげん「うざい」ですが)し、このTV版も「冗漫で失笑もののネタドラマ」くらいにしか思っていませんが、このTV版を映画版より評価する人の意見も納得できるものですし、それを否定するつもりはありません。ですが、その「TV版を評価する層」でさえ「恐怖描写はキューブリック版が上」と評価されている現状を考えると、「キングはホラー(映画)のなんたるかを理解していない」と皮肉られても仕方ないな、と思う次第です。


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