2017年10月30日月曜日

【企画作品】キューブリックがハリウッド進出時に映画化を企画したライオネル・ホワイトの小説『強奪(The Snatch)』

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック




 キューブリックがジェーム・B・ハリスと組んで「ハリス・キューブリック・ピクチャーズ」を設立し、最初に映画化権を取得したのはライオネル・ホワイトの小説『強奪(The Snatch)』でした。しかしこの小説は幼児誘拐を題材としていて、アメリカ映画制作配給協会(Motion Picture Producers and Distributors Association)は制作を許可しませんでした。キューブリックはユナイトにホワイトの別の小説を買うことを要求し、フランク・シナトラ主演で企画が進んでいた『見事な結末(Clean Break)』の映画化権を獲得、『現金に体を貼れ(The Killing)』として制作・公開したそうです。

 ちなみに『The Snatch』は1969年にキューブリックとは何かと因縁深いマーロン・ブランド主演、ヒューバート・コーンフィールド監督で『私は誘惑されたい(The Night of the Following Day)』として映画化されました。ただし、無用なレイティングを避けるためか、幼児誘拐は女性へと改変されていて、その予告編が上記になります。

 以上の経緯から、この作品は「キューブリックが映画化を企画した作品」としてリストアップされるべきですが、なぜかこの件に関してはIMDdにある『The Night of the Following Day』のトリビアの項目に紹介があるのみです。つまりハリスやキューブリックが語っていた「たまたま書店で『見事な結末』を見つけて気に入り、それを映画化した」のではなく、「『強奪』の映画化が不可能になったハリスとキューブリックは書店でライオネル・ホワイトの別の小説を探し、気に入ったのが『見事な結末』だった」ということになります。なぜ『強奪』の経緯を伏せていたのかはわかりませんが、この小説の映画化権を巡って何らかのトラブルがあったとしたら、1968年公開というフィルム・ノワールものとしては遅きに失した映画化も、なんとなく納得できますね。