source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
キューブリックが使用したビューファインダーとカチンコ。日付は1968年3月6日。公開は同年の4月なのでギリギリまで撮影していたことがわかる。
『2001エンビジョニング』レポート[その2]
by カウボーイ
展示の様子は私があれこれ言うよりも、画像を見ていただくのが良いかと思います。
『エンビジョニング』と言うくらいで、「いかにしてキューブリックとアーサー ・C・ クラークのアイデアが創造され、視覚化されていったか」が、展示会のテーマであったと思います。脚本、演出、編集には簡単に触れながら、美術、衣装、特殊効果、そして、宇宙船をはじめとするモデルがメインで取り上げられておりました。演技、撮影、音響、音楽には特に触れていません。今回の展示会はフランクフルトで行われた展示会を、そのまま持って来たということです。
当初、キューブリック直筆のメモやノートを見ることができるかもしれないと期待したのですが、タイプされた文章に、彼がペンで訂正を少しだけ加えている手紙1枚のみが直筆の品でした。
1965年7月29日、制作補佐のロジャー・カラスに宛てたIBMに関する手紙。
一方で、美術や技術スタッフによる直筆のメモや手紙は多数ありました。そこには彼らの仕事内容が手にとるように分かる文章が緻密に書かれています。あくまでも『2001年』の視覚化が、展示会のテーマなのでしょう。
スタッフのメモ。内容はキューブリックからの問い合わせに対する回答。
キューブリックの個人的な品はありました。数は少なかったですが、そこに我々が感じるものや、考えることは数多いと思います。
キューブリックが生涯で獲得した唯一のオスカー、『2001年宇宙の旅』特殊視覚効果賞。
今回の展示会はさらっと一通り見れば15分で終わりますが(「これだけなの?」と発言していた客もいました)、しかし、掲示された説明の文章は詳細であり、ドキュメンタリーやクリップをヘッドホーンを使って鑑賞もでき、アートワークや設計図も奧が深いので、展示物を一通り観た後、ディテールを数時間でも堪能できる内容になっていると思います。今年の7月まで開催されていますので、私は再び訪問し、よりじっくりと鑑賞するつもりです。
前記事「『エンビジョニング2001』(Envisioning 2001: Stanley Kubrick's Space Odyssey)特別イベントのレポート[その1]」の続きで、今回は展覧会と70mm版『2001年宇宙の旅』についてのレポートです。
展示物の数はあまり多くないようですが、これはMGMの倉庫に保管していたプロップや撮影モデルなどを、MGMの倒産時にキューブリックが他者に真似されるのを恐れて廃棄してしまったからです。ですので、この展覧会に展示してある宇宙船のモデルは全てレプリカになります。唯一現存しているアリエス1B宇宙船のモデルは、ロサンゼルスに開館予定の「アカデミー博物館」に展示されることになっています。また、宇宙ステーションに置かれていた赤(正しくはマゼンタ)の椅子「ジンチェア」もレプリカです。
このように、ついつい目が行きがちな大型の展示物は残念ながら当時のものではありませんが、それでも宇宙服やヘルメット,猿人の着ぐるみ、HAL、スターチャイルドは現存する貴重な当時のプロップですし、なによりも紙資料は制作の裏側が垣間見える貴重なものなので、じっくりと鑑賞すべきでしょう。『2001年…』に限らず、こういった展示物は「背景情報を知っているか否か」で鑑賞の充実度は全く変わって来ます。歴史マニアが古戦場で目を輝かせるのと同じです。興味のない方にとって古戦場は単なる「田舎の風景」ですからね。
レポートには「直筆の資料が少ない」とありますが、キューブリックは悪筆だったのを気にしてか、この頃からタイプライターを頻繁に使うようになったので、直筆の資料はそもそもあまり多く残っていません。キューブリックの場合、原作小説とか台本に殴り書きのような書き込みがよく見られますが、当時のリアルなキューブリックの心境が垣間見えるようで、興味深いですね。
今回のこのレポートを送ってくださいましたカウボーイさまのご好意により、この『エンビジョニング2001』の展示物の画像をご提供いただきましたので、読者の皆様にシェアしたいと思います。ただ、現在開催中の展覧会ですし、ネタバレされるのを嫌がる方もいらっしゃるかも知れませんので、シェアは圧縮ファイル(zip)をダウンロードする形とさせて頂きます。また、そのような事情なので、画像の取り扱いは個人利用の範囲内(自分用の資料など)とし、ネットに再アップするなどの行為はご遠慮いただきますよう、宜しくお願いいたします。
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それでは改めてカウボーイさま、素晴らしいレポートと写真、ありがとうございました!