source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
画像引用:IMDb - Malcolm McDowell
映画『時計じかけのオレンジ』の暴力的な主人公、アレックス役で世間に強烈な印象を残した俳優マルコム・マクダウェル。かつては若者の怒りを体現する存在だったが、今ではずいぶん穏やかな雰囲気になった。最新作の撮影裏話から、自身のキャリアや人生、そしてアカデミー賞まで、77歳の今だからこそ語れる本音のインタビューをお届けしよう。
〈以下略〉
(全文はリンク先へ:クーリエ・ジャパン/2020年7月31日)
マルコム・マクダウェルは1972年、原作者のアンソニー・バージェスともに『時計じかけのオレンジ』のプロモーションに世界中を飛び回っていました。最初の頃は二人とも映画を支持し、擁護していましたが、マスコミのバッシングが酷くなり、命を脅かす脅迫が自身の身辺まで達するとその態度を急変、一転してキューブリック批判、映画批判を始めます。それをロンドンの自宅で見ていたキューブリックが「裏切り行為」と捉えたであろうことは想像に難くありません。キューブリックは裏切り者には徹底して冷淡な態度を取ります。そうなってしまえばいくらマルコムがキューブリックに親愛の情を感じていたとしていても、無視されるのは当然と言えます。
もちろん、「自分は安全な場所にいて、自分たちだけ脅迫の危険があるプロモーション活動に従事させている」とマルコムとバージェスが不満に思っていたであろうことも想像できます。しかし脅迫はキューブリックの元にも届いていました。「人間の暴力性を暴いた映画で、人間の暴力性を批判する人たちが、人間の暴力性を露わにして脅迫する」という映画の世界を地でいく現実は、もはや「皮肉」としか言いようがありません。
マルコムは後年になって『時計…』を再評価し、キューブリックや作品を悪く言うことはなくなりました(ひどい目に遭った、とは語っている)。このインタビューでもそれは伺えるし、キャンペーンやプロモーションでキューブリックの遺族とも顔を合わせています。マルコムはこのインタビューでもわかる通り、ストレートな物言いをする人間です。ここで語った「出演した映画のほとんどは忘れてしまった」とは、「(あまりにもひどい映画に出続けて)思い出したくもない」という、マルコムなりの「ストレートな物言い」だと感じました。