2015年4月23日木曜日

【上映情報】品川プリンスシネマにて『バリー・リンドン』を鑑賞

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック


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 2015年4月21日、品川プリンスシネマで『バリー・リンドン』を鑑賞してきました。シアター10のスクリーンサイズは4.24×7.67m(約1:1.8)、BDが1:1.78なので、ほぼそれと同じ感覚で観ることができます。この情報だとアメリカンビスタということでしたが、DCPもアンサープリント(おそらく1:1.77)からの起こしだと考えるとこのアス比になりますね。でも、キューブリックは上映時はヨーロッパビスタ(1:1.66)を指定していたのでその点はやはり悔やまれます。フルサイズのDVDに慣れていると、どうしても天地が詰まった印象が残ってしまいます。あと、オープニングのワーナーロゴがBDと同じでメタリックに変更になっていました。キューブリックは丸っこい旧ロゴのスルーアニメーションに合わせてBGMをスタートさせているので、この変更は残念です。

 肝心の本編ですが、よく言われる映像の美しさ云々よりも今回は俳優の演技に着目してみました。バリーを演じたライアン・オニール、レディ・リンドンのマリサ・ベレンソンはもちろんですが、ブリンドン卿のレオン・ヴィタリの演技は特に素晴らしかったです。キューブリックは長編の小説の映画化に当たり、ストーリーを進める上で必要な情報はナレーションで説明し、「ここは映像化したい」というシーンは映像(台詞は極力絞り込む)と音楽のみで情感豊かに描き上げています。特にラスト、レディ・リンドンがバリーへの年金を支払う書類へのサインを逡巡し、それに気づいたブリンドン卿が真意を探るように視線を向けるシーンは、それまでの三人の経緯を思うと万感胸に迫るものがあります。私的にはキューブリック作品中、一番情感に溢れたシーンではないかと感じました。「人間」という存在を知り尽くしていたからこそ表現できる心の奥底にある「本当の感情」。ニヒリストを突き詰めた先に存在する「ヒューマニスト」なキューブリックがここにいます。「大切なことは台詞にしない」キューブリック。「奴は人間に関心がない冷徹な完全主義者」という的外れな批判はそろそろおしまいにして欲しいものです。