2015年4月27日月曜日

龍三と七人の子分たち

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


映画「龍三と七人の子分たち」オリジナルサウンドトラック
元ヤクザの老人たちが若い新興犯罪組織相手に暴れまわるコメディー・ドラマ「龍三と七人の子分たち」。社会問題をからめつつ、まるで説教臭くないところがいい。

かつて“鬼の龍三“と恐れられた元ヤクザで70歳の龍三は、引退した今では家庭にも社会にも居場所がなく、世知辛い世の中を嘆いていた。そんなある日、オレオレ詐欺に遭遇したことをきっかけに、元暴走族の京浜連合と因縁めいた関係になってしまう。高齢者を騙す若い連中を成敗するべく、龍三はかつての仲間たちを招集し、勢いで一龍会を結成して、京浜連合のチンピラたちの邪魔をするのだが…。

北野武監督の「アウトレイジ」は壮絶なヤクザ映画だったが、同じヤクザを扱っていても、本作は、元ヤクザのおじいちゃんたちが主人公。ストーリーはシンプルで、元ヤクザの老人たちが、彼らなりのやり方で、高齢者を喰いものにする犯罪集団に一泡ふかせるというもの。高齢化社会、福祉・老人問題、オレオレ詐欺や悪徳商法などの社会問題を扱い、時事ネタも多いが、社会派のメッセージはなく、どこかズレた昔気質の老人たちの言動に、しばしばほろ苦い笑いがこみあげる。世直しといっても元ヤクザ、やることなすことハチャメチャで、そのギャグは北野武、いやビートたけし、いやいやツービートの漫才やギャグのノリなのだ。高齢者に頑張れとエールを送るわけでもないし、若者を非難も擁護もしない。龍三と息子が感動的に分かり合うハズもなく、老人(劇中ではジジイと連呼する)たちの暴れっぷりときたらまるで子供じみているのだ。北野武監督自身、刑事役で出演するが、監督もまた“ジジイ”世代。キャッチコピーにもある通り“俺たちに明日なんかいらない!”とばかりに開き直ったことで、パワーが生まれた。終盤にはまさかのカーチェイスまである。藤竜也はじめ、ベテラン俳優たちの肩の力がぬけた名演で、老人映画の快作に仕上がっている。
【65点】
(原題「龍三と七人の子分たち」)
(日本/北野武監督/藤竜也、近藤正臣、中尾彬、他)
(ペーソス度:★★★★☆)
チケットぴあ

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龍三と七人の子分たち@ぴあ映画生活