2015年6月29日月曜日

悪党に粛清を

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


妻子を殺された男の復讐劇を描く異色の西部劇「悪党に粛清を」。マッツ・ミケルセンがシブすぎ!

1864年、元兵士のジョンは戦争で荒廃した祖国デンマークから新天地アメリカに移り住む。7年後、ようやく妻子を呼び寄せるが、駅馬車で同乗したならず者に、非情にも妻と子を殺される。怒りのあまり彼らを撃ち殺したジョンだったが、そのならず者は、この辺り一帯を支配する悪名高いデラルー大佐の弟だったため、大佐の怒りを買ってしまう。大佐はジョンを追いつめ、さらにジョンの弟の情婦で声を失った美女マデリンを巻き込んで、それぞれの壮絶な復讐が始まった…。

長年映画を見ているが、ここに来て北欧製西部劇を見ることになろうとは!しかもこれがなかなかの出来栄えなのだから驚く。スタイリッシュな映像は、南アフリカ・オールロケというから、これはかなりのレアものだ。復讐というテーマは、西部劇の本流のひとつだが、デンマーク人監督クリスチャン・レヴリングは、無駄な友情やユルい愛情はいっさい省いて、ひたすらハードボイルドな雰囲気を漂わせる西部劇を作ってみせた。なんといっても主演のマッツ・ミケルセンの冷徹と言ってもいいほどのドライなたたずまいがいい。言葉少なで、愛する妻子と対面しても口の端を少し緩ませる程度でほとんど無表情。しかも射撃の名手で、復讐も自信満々。加えて、一言もしゃべらない(舌を切られてしゃべれないという設定)マデリンを演じるエヴァ・グリーンの目力が、これまたすごい。もともと目つきが悪い美女だが、この役での彼女は凄味がある。西部劇の全盛期は明らかに過ぎたが、このジャンルを偏愛する人は、世界中に確かに存在するのだ。移民の国アメリカの正義の歴史は、血で血を洗う歴史なのだと改めて思い知る佳作である。
【70点】
(原題「THE SALVATION」)
(デンマーク・英・南アフリカ/クリスチャン・レヴリング監督/マッツ・ミケルセン、エヴァ・グリーン、ジェフリー・ディーン・モーガン、他)
(レア度:★★★★☆)
チケットぴあ

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